2022.12.2
ハーバードのことは考えずに、東大だけを見て「すごい」と思い込むことの幸せ感 第6回 東大信奉と低学歴信仰
中学受験をするには、お金が必要です。子供が小学校の三、四年にもなればSAPIX的な塾に入れ、中学受験マンガ『二月の勝者―絶対合格の教室―』に描かれていたように、課金ゲームかのように授業をじゃんじゃん受けさせなければならないことを考えれば、中学受験は経済的に余裕のある家の子供にのみ許された行為。
日本の近代において、日本人は「子供には、自分より高い学歴をつけさせたい」と思っていました。親が高校卒であれば、「子供には大学まで行かせたい」と思い、親が大学を出ていれば「子供には、自分が出た大学よりもっと良い大学に行かせたい」と思ったのです。
しかしある程度、大学進学率が高まると、今度は「親以上の学歴」を子供が得ることが難しくなってきます。日本人の学歴は東大がトップにしてどんづまりですから、東大の子は東大に入るしかなくなってくる。子供に無理をさせない風潮もあって、学歴で親越えできない子供が昨今は目立ちます。
女の子の場合は、そこにジェンダーの足かせもかかることになります。「女に教育はいらん」という考えは今も消えたわけではなく、
「女の子なのだから、東大に行ってしまうとその後の人生が心配」
と、東大に受かっても私立大学に行かせたり、
「女子大に行くなら、上京してもいい」
ということになったり。
二〇二一年のデータで女子の都道府県別大学進学率を見てみると、トップの東京都は約七十四パーセントであるのに対して、最下位の鹿児島県は約三十五パーセントと、二倍もの差がついています。伝統的価値観が強そうな地域ほど、女子の大学進学率が低い印象を受けるのでした。
とはいえそれでも日本人は、じわじわと大学進学率を上昇させてきたのです。その昔、大学を出た人が「学士さま」などと言われていた時代と比べると、半分程度の人が大学に入るという状況は隔世の感があるわけですが、しかし世界を見てみると、日本の大学進学率は決して高くはない、というよりは「低い」のでした。
アメリカ、韓国、スウェーデン、ノルウェーといった国において、大学進学率は七割を超えています。OECD(経済協力開発機構)加盟国の大学進学率の平均は62パーセントということで、日本よりも10ポイントほど高い。国ごとに「大学」の基準が異なるので一概に比較はできないものの、先進国の多くは、大学進学率をさらにアップさせるための施策を打ち出しているのに対して、日本人は大学へ進学する人が五割ほどしかいないのに、「まぁこんなものか」と思っているきらいがあるのです。