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女風ユーザーが風俗嬢に転身……その意外すぎる理由とは?

風俗でもらった「優しさのバトン」

 それは、「恩送り」という言葉だ。「恩送り」とは、誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、別の人に送ること。きっと、女風で「優しさ」というバトンを受け取った愛菜さんは、それを無性に誰かに渡したくなったのだ。だから、風俗で働くことにした。しかしその行為は愛菜さん自身をも、さらなる「優しさ」で満たしてくれた。それは意図せぬ贈り物だった。愛菜さんはその素晴らしさを、私に伝えようとする。
 男性が屈託のない笑顔で喜んでくれる姿が、何よりも嬉しかったということ。Mだと恐る恐る告白してくれたお客さんに、要望通り身体をギューギュー踏んで責めてあげたこと。すると満面の笑みに変わったこと。そしてそんなお客さんたちを見ていると、自分も心の底から幸せになれたこと――

「風俗勤めで、相手の歓びが、自分自身の歓びにも繋がるって気づいたんです。私の欲望の主体は相手にあるんですね。だから相手が望めば、Sにでも痴女にでもなれちゃうことがわかりました。誰かの色に染まるのが好きですし、風俗は本当に向いていたと思います。風俗を利用したり、勤めたりすることで人の温かさや優しさを知ることができた。だからすごく良い人生経験になったんですよ」

 話を聞いていると、私まで不思議とじんわり温かい気持ちになっているのがわかった。それは愛菜さんの体験を通じて、私も幸せのおすそ分けをもらっていたからだろう。
 人生の節目となった貴重な風俗勤めだが、会社員との2足のわらじで子どもと過ごす時間が減ったこともあり、残念ながら今は休止している。しかし風俗に手ごたえを感じたのは事実である。身体がもう1個あれば、ぜひもう一度風俗で働いてみたいですね――、そう言って愛菜さんは、私ににっこりと笑いかけた。

写真:photoAC
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菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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