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ホス狂いや女風に「沼る」女性を生む、日本ならではの事情とは?

女性用風俗、略して「女風」。かつては「男娼」と呼ばれ、ひっそりと存在してきたサービスだが、近年は「レズ風俗」の進出など業態が多様化し、注目を集めている。
女性たちは何を求めて女風を利用し、そこから何を得たのか――
『ルポ 女性用風俗』の著書もあるノンフィクション作家の菅野久美子さんが、現代社会をサバイブする女性たちの心と体の本音に迫るルポ連載。
前回に続き、朝香さん(仮名・28歳)のお話を伺います。

 すっかり女風の「沼」に、ハマりこんでしまった朝香さんだが、沼の対価として、やはり金銭面での負担は大きい。最初は月2万ほどの利用料金だったが、今では月15万ほどに膨らむようになったのだ。セラピストに会う費用を捻出するために、副業を増やすようになった。そのため少し無理をしながら、家計をやり繰りをしている。朝香さんにとって、「沼る」ほどの魅力とはなんなのだろうか。

「担当のセラピさんは、色恋営業をする感じの人じゃない。色恋とかじゃなく、ユーザーさんを不公平に扱いたくないから、お金を使ってくれた人には、その分だけ、サービスとして返すスタンスなんです。だから月15万使うホスピタリティーを知ってしまったら、もう月5万の世界に戻れないんですよ。たとえるなら、3000円のボディソープを使いだしたら、もう1000円のボディソープに戻れない感じです(笑)。これが、沼ですね。めちゃめちゃ沼ですね」

 朝香さんはそう言うと、少し微笑んだ。なるほど、ボディソープのたとえは言い得て妙だと思う。一度使ったら安い商品には戻れない感覚は、私にもとてもよくわかる。
 そして確かに一般企業に勤める女性である朝香さんが、女風につぎ込んでいる金額は、お小遣いとしてはかなり大きい気がする。それでも、直感的に私は朝香さんが放つオーラに、他の女性にある、「沼」を感じなかった。言葉にするのは難しいが、正確には「沼」ではなく、その先に広がる「闇」というべきか。そう指摘すると、朝香さんは笑いながら、首を振った。
――いえいえ、私も十分女風に沼っていると思いますよ。
「沼」にハマっていることを意識している朝香さんだが、私にはどうしても、不思議とどこか突き抜けたような達観や、余裕があるように思えてしまう。その感覚の源泉は、一体どこから来るものなのだろう。

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菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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