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彼氏アリ20代女子が女性用風俗に求めた、たった一つのこと

要求ばかりのセックスにうんざり

 聞くところによると、由奈さんはこれまで5人の男性と付き合ったことがある。しかし、歴代の彼氏たちは揃いも揃って、由奈さんの反応もお構いなしに即挿入を求めてきた。由奈さんは、元々濡れやすい体質だ。だからオーラルセックスはおろか前戯もおざなりで挿入されることも多かった。彼氏たちは自分だけ気持ち良くなって、終わり。その反面フェラチオなど、してほしいことの要求だけは多い。
 そんなセックスに由奈さんは長年、違和感を感じていたという。付き合った当初こそ新鮮だが、その感動は徐々に薄れていく一方、セックスそのものが男性主導なので、義務のようになっていく。これまでの彼氏との性生活はその繰り返しだった。

「私の世代だと、男の子たちって、若くて精力旺盛だから毎週会う度に『したい』って言われて、自然とセックスする流れになるんです。でも、だんだん面倒になってしたくないなと思っちゃうんですよね」

写真:photoAC
写真:photoAC

 これまでセックスの最中は気持ちいいふりをして、自分を誤魔化してきた。そんな由奈さんの演技が功を奏したのか、彼氏たちは毎回、性的に満足していると思い込んでいるようだったという。しかし、由奈さん自身、自分の心と体に嘘はつき続けるのは辛かった。
 そんな由奈さんの告白に、思わず「うんうん、わかる」と深く頷いてしまう私がいた。私自身、セックスの場面において幾度となく演技をした経験があるからだ。
 思えば40代の私と、20代の由奈さんとでは年の差は15歳近くもある。しかし、性的な不満に関しては、年代を問わず多くの女性たちの抱える普遍的な悩みなのかもしれない。
 そう感じて頭を抱えていると、ふわふわの卵が乗ったオムライスとアイスココアが運ばれてきた。
 オムライスは思いの外本格的で、湯気を立てている。由奈さんは、「わー、すごい! 美味しそう!」と嬉しそうにキラキラと目を輝かせる。由奈さんは無邪気で、きっと優しい女性なのだろう。だから夜の生活においても、サービス精神を発揮して苦しんでいたのではないかと感じた。
 そんな由奈さんだが、あまりにセックスが苦痛で、反旗を翻したこともあるという。

「私、彼氏にセックスしたくないって言って、しばらく夜の生活を拒んでいたんですよ。私からしたらセックスの時間は苦痛だったし、演技するのも嫌で限界だった。そしたら彼氏が『もう1ヶ月もしてない……』って、すごく悲しそうな顔をして、シュンってなってしまったんです。それで、しなきゃ彼氏が悲しむし傷つけたくないし、本当にどうしようって思い悩んでいたんですよ」

 彼氏の立場からすると突然の性行為の拒否は青天の霹靂だったに違いない。由奈さんは想像以上に落ち込む彼氏の姿を目の当たりにして切なくなった。しかし、誰にも言えないセックスへの漠然とした不満は沸々と募っていった。
 結局彼氏とは、別れてしまった。

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菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

X:@ujimushipro

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