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彼氏アリ20代女子が女性用風俗に求めた、たった一つのこと

「自分の体って、ちゃんと感じるんだ」

 雨がちらつくある日の休日、由奈さんは池袋駅前でセラピストと待ち合わせた。現れたセラピストは写真よりも少しだけくたびれてみえた。北口にあるホテル街までの道すがら、セラピストと言葉を交わすとどうやら夜勤明けならぬ、泊まりコース明けだと教えてくれた。さすが人気セラピスト、女性たちから引っ張りだこなんだなと、由奈さんは感心した。

 シャワーを浴びて、カウンセリングが始まる。由奈さんが伝えたのは、「これまで彼氏とのセックスで気持ち良くなった経験がない。気持ちよくなってみたいし、中イキもしたい」というシンプルなものだった。セラピストは、そんな由奈さんに対して初回で必ずイケるわけではないと伝え、その上で「できる限り努力してみる。リラックスして楽しんでね」と安心させた。そこからの体験は、まさに至福の時だった。

「初めてのセラピストさんとの体験で感じたのは、『自分の体って、ちゃんと感じることができるんだ』ってことなんです。それにはすごく感動しましたね。これまで彼氏に指を挿れられたことはあったんですが、何も感じなかった。だけど女風では心の底から気持ちいいって、初めて思えた。気がつくとお尻を舐められたりしていたんですが、それもすごく良かったんです。すごい! これはプロだ!って感じたんです。これまでの歴代の彼氏にはない未知の体験でしたね」

 由奈さんは、目を輝かせながら嬉しそうにそう語る。そしてまるでその時を思い出したかのように、うっとりとした表情を浮かべた。そんな由奈さんの様子に、私もつられて思わず幸せな気分になった。
 由奈さんはその後、月に2回のペースで同じセラピストを指名するようになる。

(後編に続く)

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菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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