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私たちは癒されたい ~「女風」に通う女たち~

セラピストに「沼落ち」……嫉妬に燃える女風ユーザーが気づいた真実

女性用風俗、略して「女風」。かつては「男娼」と呼ばれ、ひっそりと存在してきたサービスだが、近年は「レズ風俗」の進出など業態が多様化し、注目を集めている。
女性たちは何を求めて女風を利用し、そこから何を得たのか――
『ルポ 女性用風俗』の著書もあるノンフィクション作家の菅野久美子さんが、現代社会をサバイブする女性たちの心と体の本音に迫るルポ連載。

前編に続き、「性欲の解消」のために女風を利用しているという梨花さん(仮名・35歳)のお話を伺います。

ときに「沼る」ことがあっても

 しかしそんな女風体験は、決して良いことばかりではなかった。誠実な性格の梨花さんは、ちょっぴり痛くて辛い体験をしたことも決して隠そうとせず、私に教えてくれた。梨花さんはあるセラピストに〝沼って〟しまったのだ。

「その人のことをすごく好きになっちゃったんですよ。私、男の人とは連絡をいっぱい取りたいタイプなんです。だからDMで、朝起きるとすぐにおはようとか、寝る前にはおやすみとかまるで彼氏のようなやり取りをしていました。そのときセラピストに抱いていた感情は、ほぼ恋愛に近かったと思います」

 それからは、彼の毎日の動向から目を離せなくなった。お店の予約状況をチェックし、満了になっていたら他の客と会っていることを想像し、気分が落ち込んだ。セラピストのSNSを逐一見て、誰に「いいね」を押しているかまで気になった。

写真:photoAC
写真:photoAC

 しかしそんなやり取りが半年ほど経ったころ、ある事件が起きた。

「君は僕のお客さんの中でも利用回数は少ない方だよ」

 そのセラピストの何気ない一言で、急に我に返った。梨花さんの利用頻度は、月一回のペース。それでも一人暮らしの会社勤めの身としては、なけなしの大金である。だけど、自分は「細客」の一人でしかない。そう自覚したとき、梨花さんの中でスッと何かが冷めていった。

「その時はショックで傷ついたし、腹が立ちました。それまで自分だけは彼の特別な存在だと思いたい気持ちがあったんです。だけど、彼の言葉で自分は客の一人だと実感した。私は勘違いしていたんだって。それ以降ですね、自分自身を見つめ直すことができたのは――

 そう言うと、梨花さんは少しだけ遠くを見つめて、半分ほどに減ったコーヒーを口にした。

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菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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