2023.1.13
バブル末期の名古屋で起こった、フレンチレストラン最悪の思い出
腹が立つを通り越して、なんだかそれはもはやコントのようでした。子供の頃見ていたドリフのコントで、高級レストランを舞台にしたものがありました。志村けん演じる客と、加藤茶演じるサービスマンのコントです。客は徹底的に不慣れで、サービスマンは徹底的にそれを馬鹿にするというのが大筋の内容。
現実にもこういう世界があったのか、と僕は呆気に取られていました。いや、現実にあったからこそ、それを誇張してコントが作られたのでしょうし、またこういう扱いを受けてフランス料理が嫌になった人も実際数限りなくいたことでしょう。なんと僕も急遽そのひとりになってしまったわけです。
ちなみにその時の料理は、まあこれは僕がホテルレストランを選んでしまったのが間違いといえばそうなんですが、結局「結婚式場のフランス料理」と大差ないものでした。僕はその一度の経験で、
「大阪のあの店はたまたまの奇跡だったに違いない」
と結論づけてしまい、それからしばらくすっかりフランス料理からは遠ざかってしまうことになります。
仕事がらみで先輩たちと行く居酒屋はさすがに気の利いたおいしい店ばかりでしたし、自分でもイタリアンやエスニックを中心にお気に入りの店も見つけました。世の中に安くておいしい店はいくらでもあり、わざわざ高いお金を出して不快な思いをするリスクを背負う必要など、これっぽっちもありませんでした。
だからというわけでは全くないのですが、このフランス料理に関する続き物の話の中で、この後「ウン万円するような高級店」の話は出てきません。それはあまりに特殊な世界だからです。言うなれば一握りの作り手と、全体から見ればごく少数のお客さんたちの世界。
この世界は様々に発展し、細分化もしています。正直なところそれを過不足なく書き留めるには僕の力量が追いつきませんし、たとえそれが可能だったとしても、それはそれで完全に独立した話として真摯に書かれるべきだと思っています。
ただひとつ確実に言えることは、今はもう、かつての結婚式場に毛が生えたような料理を出しながらお客さんを小馬鹿にするような店は存在しないはずです。ハイクラスな店におけるスタイルの移り変わりの速さもまた、フランス料理の特徴かもしれません。
