2023.5.18
あの世とこの世のファジーな境目 第14回 死んでいるのに死んでいない人々——霊媒師家系・猫沢家にまつわる恐怖のリアル怪談
撮れちゃった心霊写真
こんな環境に育ったからこそ、私の非科学的なものに対する拒否感は強く、加えて民間の物理学者だった叔父のシロちゃんの影響もあって、過去から現在に至るまで、いわゆる「霊」の存在は、特に量子力学の世界から解明できるのではないか? と見ている未だアンチスピ派だ。が、これまでに、科学だけでは説明のつかない、加えて科学的な裏付けがむしろある中での不思議な現象も多く体験してきた。そのうちのひとつをお話ししよう。
時は遡り、2000年ごろ。私は30歳前後だったと記憶している。スコットランドの首都・エジンバラへ、名物の年越し花火大会(というと、日本風だけど。笑)を観に出かけた。エジンバラ駅に降りた瞬間から覆い被さるような重い空気を感じた私は、この時はまだ〝中世の暗い歴史がある街だからな〟と思うだけだった。
ホテルに荷物を置き、すぐに街の中心に広がる旧市街地の散策に出かけた。エジンバラ城にほど近い広場の向かいに『THE LAST DROP——最後の一雫』という名前のバーがあった。聞けばここは、中世の魔女狩り時代から続く歴史的なバーで、店名はこの広場で火炙りの刑に処される魔女たちに、最後の情けとして一杯の酒を飲ませたことに由来するのだそう。エジンバラも、中世ヨーロッパで吹き荒れた陰惨な魔女狩りの暗い歴史を背負う街のひとつだった。
かつての旧市街地とその外側のエリアを隔てている壁沿いを散策している頃には、北の冬の太陽は、もう傾き始めていた。一見のどかな郊外の風景に差し掛かったとき、たとえようもない重い空気を感じた。ふと左手をみると可愛い一軒家の集落があり、気味の悪い空気を払拭したくて無理にはしゃいで2枚ほど、その集落の写真を撮った。どれどれと覗き込んだデジタルカメラには連続して2枚の集落の写真が写っていたが、ほぼ連続して撮ったのにもかかわらず、後の1枚にフード付きのマントを羽織って、片手にはカンテラをぶら下げて両手を広げている魔女の姿が、白い霧のような様相ではっきりと写っていたのだ。
「…………!!!!」
なんともいえない恐怖が足元から突き上げてきて、その場を走り去ってホテルへ戻った。
