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父親のアノ部分を見てしまった親友がつぶやいた驚愕のひとこと 第6回 服と全裸と父・サピエンス〜猫沢家の服コンプレックスを脱ぎ捨てる2022年、夏

水着一丁のムッシュがバゲットを抱えて

 2022年9月現在、相変わらず私はパリで最低限のワードローブで暮らしている。仕事三昧でほとんどアパルトマンから出られなかった今年の夏は、毎日着心地の良いシンプルな素材のTシャツやタンクトップで過ごせて、むしろ気分がよかった。そしてパリは、クーラーが基本的にないこともあって、街行く人の格好も、本当に気楽なスタイルばかりだった。カニキュールと呼ばれる猛暑時には、水着一丁のムッシュがバゲットを抱えて歩いているし、パリジェンヌたちも90%がノーブラで、透けようが乳首が見えようが、誰もいやらしい目で見たりしない成熟した国、フランス。

 移住がきっかけでやらざるを得なかった、ここまでの人生で最大の断捨離と、物質主義から解き放たれるフランスでのシンプルな暮らしにより、やっとこの歳で、私は猫沢家の服コンプレックスを脱ぎ捨てた。自分を誇張しない、肌の一部になるようないい素材の長く着られるものだけを、最低限、必要なだけ。そんな考えに辿り着いたのも、猫沢家の反面教師があったからに違いない。

 ところでフランスには各地にヌーディスト・ビーチがあるから、もしも父がまだ生きていたら、南仏のコバルトブルーの海で、思う存分全裸を楽しんでもらえたのにな、と思う。
 ヅラを股間に当てて、水際で大はしゃぎする父の姿がありありと目に浮かぶ。

次回は10月20日(木)公開予定です。どうぞお楽しみに!

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猫沢エミ

ミュージシャン、文筆家。2002年に渡仏、07年までパリに住んだのち帰国。07年より10年間、フランス文化に特化したフリーペーパー≪BONZOUR JAPON≫の編集長を務める。超実践型フランス語教室≪にゃんフラ≫主宰。著書に料理レシピエッセイ『ねこしき 哀しくてもおなかは空くし、明日はちゃんとやってくる。』『猫と生きる。』など。
2022年2月に2匹の猫とともにふたたび渡仏、パリに居を構える。
9月、一度目のパリ在住期を綴った『パリ季記 フランスでひとり+1匹暮らし』が16年ぶりに復刊(扶桑社)。また、12月9日には最新刊、愛猫イオの物語『イオビエ』(TAC出版)が発売されたばかり。

Instagram:@necozawaemi

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