2022.5.19
フランス渡航前の断捨離で見つけた古い手紙の驚くべき内容 第2回 金とビンボーのラブレター、フロム・過去
祖母の手紙に書かれた孫娘の名前
その昔、画家が多く暮らしたセーヌ川の左岸、モンパルナス地区にほど近いカルチエ(界隈、地区)で、私は仮暮らしを始めた。今度は、オスの猫二匹と、亡き娘たち(2002年に渡仏した初代メス猫と、2019年に出逢って昨年他界した4代目のメス猫)の遺骨と共に。この移住に関しては、付き合って長いフランス人の彼と私の共同プロジェクトだったわけだが、コロナ禍で手続きは煩雑になる一方で、この2年満足に会えていないお互いを励ましながらの作業が、東京とパリの二都市で同時進行していた。ヴィザの取得にはじまり、東京のマンションの売却、そして国をまたいでの引越し、荷造り。まるで生前遺品整理とみまごうかのごとき、人生最大の大断捨離もやった。持ち物の80%を捨てたり、人へ譲ったりした今回の断捨離では、当然、昔の手紙を目にすることもあった。特に母と祖母からの。家族で筆まめだったのはこのふたりだけだったし、たいてい表記のどこかが「ふざけてるのか?」と問いただしたくなる可笑しさだったので、特に面白いものは取ってあったらしい。
祖母からの手紙、宛名が「悪美ちゃんへ」になってた……(私の本名は恵美)。
す、すごい高度で微細な間違い! うっかり間違えちゃったのよねって言いやすい絶妙なツボを押さえてる!! そもそも、祖母が生涯に亘り、私の名前を正確に把握していたのかすら怪しい。幼少期に履いていたサンダルにはカタカナで「ネコザワ イミ」と祖母に書かれた。それで、幼い私はサンダルを祖母のところへ持っていって「おばあちゃん、私、イミじゃないよ。エミだよ」と言った。すると祖母は驚いた顔をして「あれまあ……おまえさんはイミじゃないのかい? おばあちゃん、今日の今日まですっかりイミだと思い込んでたよ」え……私、もう4歳だけど? と、当時の私が思ったのかはもう忘れたが。
