2021.10.23
「あなたの夫に、何度も抱かれた」知らぬは男だけ…不倫女と本妻の修羅場(第20話 夫:康介)
「奥さんにバラしてやる」メンタルが崩壊した女の狂気
――ああ、スッキリした。
日曜の朝。パーソナルトレーニングを終えた瑠璃子は、久しぶりに清々しい気持ちで空を見上げた。
やはり運動はいい。しばらく足が遠のいていたが、定期的に通おうと改めて誓った。身体も頭も軽くなり、ヘドロのごとく心に溜まっていた膿も、汗と一緒に排出された気がする。
康介から連絡が途絶えたまま、すでに半年以上の月日が流れた。
音信不通になって間がない頃は、息を吸うだけで胸が詰まった。辛くて苦しくて、やり場のない思いを既読のつかないLINEにぶつけて虚しさを募らせていた。
『お願いだから連絡して』
『私には先生しかいない』
縋ってみたり、急に攻撃的になって『無視するなら奥さんにバラす』と脅しのようなメッセージを送りつけたこともあった。しかしそれでも康介は無反応だった。
LINEを諦めたあとは無気力のまま家に引きこもり、食事も喉を通らず、床を這うような生活を続けて……ようやく人間らしい生活を取り戻したのはここ最近のことだ。
そんな中でも仕事だけは手を抜かなかったのだから、自分はよっぽど書くことが好きなのだと思う。
――あれ?
インテリアショップの前を通りかかった時、ちょうど一人の女性が店から出てきた。ビジューの目立つロジェヴィヴィエのフラットシューズを履いた、華奢で小柄な巻き髪の美人。
――彼女だ。
それが康介の妻――麻美であると認識した時、瑠璃子の足はすでに女を追っていた。