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不良夫婦
あなたは「結婚」という制度に疑問を感じたことはないだろうか。

連日メディアを騒がせる不倫ゴシップは氷山の一角。女性の社会進出、SNSや出会い系アプリの普及……結婚制度が定められた120年以上前とは、社会も価値観も何もかも違っているのだ。

これは時代にそぐわぬ結婚制度の抜け穴を探し始めた、とある夫婦の物語。

仮面夫婦状態の櫻井夫婦。妻・麻美は夫とのセックスレス・浮気に嫌気がさし、自身も婚外恋愛を楽しみながらエステサロンを起業、離婚も考えていたが、「自分にとって出産は必要」と思い直す。そして体外受精に踏み切り、晴れて子どもを授かったのだった――

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(隔週土曜で更新予定です)

「一体、誰の子どもを妊娠した?」理想の妻の恐ろしい二面性(第21話 妻:麻美)

連絡が途絶えた人妻

『あさみ、次はいつ会える?』
『最近忙しい? あさみに会いたいよ』
『元気?何かあった? 大丈夫?』

午前中から2時間近く続いたオンライン会議を終えると、晋也は大きく伸びをしながらスマホを手にとった。

この数週間、麻美からの連絡がプツリと途絶えた。

晋也が送り続けたメッセージには既読がついているものの、まるで無反応。そんなことは珍しかった。

彼女はいつも絶妙な頻度で晋也の部屋を訪れていて、関係は良好だった。

人妻という自分の立場を十分にわきまえているのだろう。晋也の腕の中にいる時はまるで少女のように甘えたそぶりを見せるけれど、一度服を身に着けると、途端に他人行儀になったりする。離れているときの連絡も最低限だ。

そんな人妻との関係は非常に心地よいものだったが、さらに興味深いことに、ここ数ヶ月の彼女の活躍はめざましいものだった。

いわゆるセレブ妻として暇と鬱憤を持て余しているのかと思っていたら、突然「起業する」と言い出し、晋也も目を見張るほどの行動力を発揮し始めたのだ。

一流の総合商社勤務と言っても、所詮は会社の奴隷。

出世競争に社内政治に飽き、頭の硬い上層部や生意気で無能な後輩にいちいち苛立つこともなくなり、良くも悪くも「足るを知る」の意味を理解し始めた時期であったから、そんな麻美をそばで見ているのは単純に面白かった。

働かずとも十分に裕福な生活を送れる彼女が、あれほど貪欲に仕事、そして自分のような男を求める理由は何なのか。

どんどん社会の枠から外れていく麻美は、人妻との情事というスリルに加えて、まるでドラマの主人公でも眺めているような、ある種のエンターテインメントを晋也に与えていた。

けれど自分が結婚するならば、妻選びは慎重にならなければならない。

麻美のような女は魅力と刺激には事欠かないが、あの様子では家を任せることはできないだろう。表面的な印象で女の本性は判断できないと学べたのはありがたい。

そんなことを考えていた矢先、しばらく音信不通だった彼女は、晋也にとんでもない告白をしたのだった。

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山本理沙

やまもと・りさ●84年 東京都生まれ。日本女子大学文学部卒卒業後、外資系航空会社客室乗務員、金融機関・コンサルティングファームの秘書業務を経てフリーランスへ。
2015年〜2019年に東京カレンダーWEBにて『東京婚活事情』『結婚願望のない男』『東京ホテル・ストーリー』など多数執筆したのち、2020年10月講談社文庫より初書籍『不機嫌な婚活』を出版。よみタイで好評連載中の漫画『恋と友情のあいだで』(里奈Ver.)共著原作者。『不良夫婦』では(妻side)を執筆。

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Twitter●山本理沙/WEB作家




安本由佳

やすもと・ゆか●81年 奈良県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、化粧品会社広報、損害保険会社IT部門勤務を経てフリーランスへ。
2016年〜2020年1月 東京カレンダーWEBにて『二子玉川の妻たちは』『私、港区女子になれない』など多数の連載を執筆したのち、2020年10月講談社文庫より初書籍『不機嫌な婚活』を出版。よみタイで好評連載中の漫画『恋と友情のあいだで』(廉Ver.)の共著原作者。『不良夫婦』では(夫side)を執筆。

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