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不良夫婦
あなたは「結婚」という制度に疑問を感じたことはないだろうか。

連日メディアを騒がせる不倫ゴシップは氷山の一角。女性の社会進出、SNSや出会い系アプリの普及……結婚制度が定められた120年以上前とは、社会も価値観も何もかも違っているのだ。

これは時代にそぐわぬ結婚制度の抜け穴を探し始めた、とある夫婦の物語。

仮面夫婦状態の櫻井夫婦。妻・麻美は夫の浮気を都合良く利用し、自身も晋也との情事を楽しんでいる。さらにエステサロンの起業も順調に進み、順風満帆だったのも束の間、「子どもは作らないんですか?」というSNSアンチの言葉や子連れの友人との遭遇により、どうしようもない敗北感を味わうのだった――

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(隔週土曜で更新予定です)

「産まない」選択はできない。セックスレスに傷つき、不倫に走った妻が下した最後の決断(第17話 妻:麻美)

「産まない」選択ができるほど、強い女ではない

剥きたての卵のような、友里恵の子どもの柔らかそうな白い肌が忘れられない。

そして、夜中のマンションのロビーで、疲れながらも愛おしそうに我が子を撫でていた母の顔。何も言わずとも分かる。彼女は自分の子どもが可愛くて可愛くて仕方がないのだろう。そこには絶対的な愛があった。

きっと、男で得られる一時的な恋愛感情など比にならない愛。

今どき、子どもを産むことばかりが女の幸せなどと思うわけではない。とはいえ、自分が子どもを望めない理由もないはずだ。麻美はまだ32歳で夫もおり、経済的に余裕もある。「できない」と決まったわけでもないのに、みすみすその可能性を手放すなんて酷く理不尽ではないだろうか。

「…………」

麻美は悔しさに一人唇を噛む。

このご時世、子どもなど産まずとも、独身でも、生き生きと人生を歩んでいる女性はいくらでもいる。

けれど麻美は結局のところ、表面的なステータスに守られていないと自分で自分の価値を認められないのだ。最近は起業や晋也との時間で気を紛らわせてはいたが、揃えるべきカードはすべて揃えない限りは、こうした卑屈な気持ちをいつまでも捨てられないだろう。

「産まない」選択ができるほど、強い女ではないのだ。

――子どもが産めないなら、やっぱりこうちゃんと結婚してる意味なんかない……。

妻の屈辱的な思いは、夫への怒りへと変わっていった。

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山本理沙

やまもと・りさ●84年 東京都生まれ。日本女子大学文学部卒卒業後、外資系航空会社客室乗務員、金融機関・コンサルティングファームの秘書業務を経てフリーランスへ。
2015年〜2019年に東京カレンダーWEBにて『東京婚活事情』『結婚願望のない男』『東京ホテル・ストーリー』など多数執筆したのち、2020年10月講談社文庫より初書籍『不機嫌な婚活』を出版。よみタイで好評連載中の漫画『恋と友情のあいだで』(里奈Ver.)共著原作者。『不良夫婦』では(妻side)を執筆。

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Twitter●山本理沙/WEB作家




安本由佳

やすもと・ゆか●81年 奈良県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、化粧品会社広報、損害保険会社IT部門勤務を経てフリーランスへ。
2016年〜2020年1月 東京カレンダーWEBにて『二子玉川の妻たちは』『私、港区女子になれない』など多数の連載を執筆したのち、2020年10月講談社文庫より初書籍『不機嫌な婚活』を出版。よみタイで好評連載中の漫画『恋と友情のあいだで』(廉Ver.)の共著原作者。『不良夫婦』では(夫side)を執筆。

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