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小野一光「限界風俗嬢」

人妻風俗嬢が直面した、夫との「性の不一致」

やっぱりこの仕事が好きだから

 じつはハルカと夫は、性に関すること以外ではうまくいっている。彼女のSNSでは、いまも夫と楽しそうに旅行している姿が上げられているし、そこには二人の笑顔もある。そして彼女は口にする。

「それ以外は全然OKなんだけど」
「性のことだけ?」
「うん。なんでだろう~」

 当初、私はハルカが夫との間に子供ができることを躊躇するのは、家庭を顧みなかった彼女の父親に対するトラウマなのではないかと考えていた。だが、それも違うようだ。というのも、長期間同棲していたホストの彼との間には、別の感情が存在していたのである。
「前の人とは中出しもあったのね。結婚したいだけでなく、むしろ子供ができたらと思ってたし……」
 

夫について「セックス以外は全然OK」と語るハルカ。  撮影/小野一光
夫について「セックス以外は全然OK」と語るハルカ。  撮影/小野一光

 ハルカは、自分と夫との性の問題について、次のように総括する。

「最初が、ファーストインパクトが強かったのよね。ダメ、この人とは合わないって思っちゃったんだよね。ちょっと一方的な感じで、相手のことを考えてないエッチなんだよね」

 そう言ってのけるのと同時に、風俗という外の世界で、性についてあらゆることを知ってしまった彼女の性欲は、いまなお、ますます昂進しているという。

「最近、お店に出るのが楽しくてしかたないの。それこそ相性のいいお客さんに出会うと、これまでにないくらい乱れてる。うわあ、私ってこんなにすごいんだって、自分でも引いちゃうくらいに……」

 それなのに、彼女の見た目にはいまだに清涼感が漂っている。いわゆる、性の匂いがほとんどしないのだ。こういうことは、過去に千人以上の風俗嬢と会ってきた私にとっても、稀有な例である。いったいなんでなんだと、理解に苦しむ。
 もはや持って生まれた才能なんだろうと、思うほかない。

 私は目の前の彼女に言った。
「考えたら風俗歴、二十年以上だよ」
「そうだね。二十年選手だね。ヤバイね。はっはははは。ヤバイね。でもさあ、こんだけやっててやめないってのは、私、やっぱ好きなんだよね。本当に口ではヤダぁとか言ってながらさあ、根本は好きなんだよね」

 笑顔でそう言い切るハルカを見て、昭和生まれの私の頭のなかには、赤塚不二夫が『天才バカボン』のなかで、バカボンパパに言わせた、あのセリフしか出てこない。
「これでいいのだ」

風俗歴20年のハルカの、どこか突き抜けた明るさと、不思議な夫婦関係……いかがでしたか?「人妻風俗嬢・ハルカ」の回は今回で終了です。
次回は「SMクラブで働くエリート女子大生アヤメ」のその後が語られます。
「SMクラブで働くエリート女子大生アヤメ」の回はこちら。「歌舞伎町で働く理系女子大生リカ」の回はこちら

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小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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