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鈴木涼美「×××な男~酒と泪とオトコと美学」
○○○な女〜オンナはそれを我慢している」のアンサーソングともいうべき新連載は、気鋭の文筆家・鈴木涼美によるオンナ目線の男性論。とはいえ、ここで取り上げるのは現代を生きる「今」のオトコたちの生態事情。かつてはもてはやされた男性像が、かつては相手にもされなかった男性キャラが、令和の今、どんな進化・退化・変遷を遂げているのか? 冴え渡る涼美節・男性論に乞うご期待!

主人公の男~オナニーみたいなセックスに承認欲求が追加されたような話

先日、同い年くらいの知り合いの男女がワラワラと集まる食事の場から帰ってきて、寒いのでお風呂に入っていたところ、別にどこかの店でかかっていたわけでもなくカラオケで誰かが歌っていたわけでもなくもちろん自分で音楽を聴いていたわけでもないのに、クドカンのドラマ「タイガー&ドラゴン」の主題歌を知らずと口ずさんでいる自分に素っ裸でドン引き、これは絶対アイツのせいだ、とその食事会にいた男性知人のさして思い浮かべて喜ばしいわけでもない顔を、湯煙の中に思い起こした。

彼の顔には、俺の話を聞けーーーの節が確かにしっくりくる。

飲み会での男子には結局目立っているのは1人のプレゼン、ということがしばしばある

お互いが知り合いの、でも別に毎日キャッチアップしているわけでもない複数人が集うような場所では、どうしたってそれぞれの発言数に差が出る。
まず、10人以上いると結構声を張らないとテーブルの端から端には届きにくいし、隣同士で勝手に盛り上がる女子などがいるわけだし、みんなに話しかけようとするには欧米風にグラスをナイフでカンカンカンとかやって注目を引くか、隣で別の会話をしている人たちが会話を中断するほど下品な単語などをあえて発するか、単純に大きい声を出すかくらいしないと、その混沌を制することはできないし、そもそも10人以上の注目を浴び、人の会話を中断してまでどうしても伝えたいことなんて基本的には誰にもない。
そして会話を中断して斜め前の男たちが話し出すえげつない下ネタに一瞬耳を傾けても、人の体験に慄くような初々しさを年々放棄している私たちは、別にそれを取り立てて面白いなんて思わないし、一瞬、「なんていう話してんのよ、もう」とおばさん臭く制したのちに、すぐに自分の会話に戻る。
 

話したいことがある、と、話したい、との間にある大きい溝
話したいことがある、と、話したい、との間にある大きい溝

ただ多くの飲み会や飲み屋の団体客への接客やパーティーや合コンなどを重ねてきて不思議に思うのだけど、完全に会話が個別奮闘になっているかというと、深い時間の二次会三次会ではそういうこともあるのだけど、まだ浅い時間の食事中などでは結構そうでもない。

お互いが一番喋りたい相手、もしくは自分と喋りたがってる相手と話す時間がありつつも、全体で盛り上がったり全体で話を聞いたりすることは結構ある。
そして女子同士の会は結構バトンの渡し合いをしたり、とある女子のエピソードの前説を別の女子がしたりと横並びで盛り上がるのに対して、男子の場合は回し役、ツッコミ、進行役、鶴の一声役、みたいに分業制なことが結構あって、結局目立っているのは1人のプレゼン、ということがしばしばある。
そしてそういう人というのはそもそも店に入った段階から、双方の角に声が届きやすい真ん中あたりの席を陣取っていて、声が大きく、笑い声はさらに大きく、そこそこ話し上手で、ノリを重要視するため、「ノリが悪い」人のことを断罪することすらある。
 

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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