2019.11.22
妊娠した女子高生が行った悲しすぎる「秘技」
中学入学後も続いた「搾取」
「中学に入ってA先輩から電話があったんです。それで『俺の友だちがその学校に行ってるから、お前がやってたこと、いつでも先生に言えるよ』って脅されたんです。『こっちは、お前の方から誘ってきたって言えばいいんだから』って。それで呼び出されて、自分でも行くしかないと思ったので行って……。そこで会ったA先輩から、他の人とエッチをするように言われました。『制服姿で下着を着けずにカラオケボックスに行き、そこにいる男とやれ』と命令されて、指定された部屋に行くと、男の人がいるんです。そこで、ナマで、中出しはナシという条件で、週に二、三回は知らない人とやらされてました。男の人は大学生から三十代くらいまででした」
中学二年生が客を取り、中学一年生に売春を強要していたというのだ。話を聞く私は、自分自身が混乱しないよう制御することで精一杯だった。ただ話を聞いているだけの、他人の私ですらそうなのだ。当事者であるアヤメの心は……。
目の前の彼女は、涙を見せることもなく、淡々と語る。感情をすべて消した、誰も足を踏み入れてない雪原のような表情だ。ドッ、ドッ、ドッ……。室内には近くの部屋で流れるカラオケの、ベースの重低音だけが響く。
「ただ、カラオケボックスでのことは、そんなに長続きしなかったんですね。たぶんA先輩が自分で客を見つけるのが面倒くさかったんだと思います。途中から『援交しておカネを持って来い』に変わったんです。それで中二から中三のときは、新宿で夜、親には塾だと嘘をついて、制服の上着をセーターに替えて、通る人に声をかけて援交をしてました。援交は最初の頃はすごく嫌だったし、性交自体も嫌でした。けど、だんだん日常の一貫になっていったんです。月の目標金額を言われてて、最初のうちは十五万円くらいで始まり、高校時代は倍くらいに上がってました。そのおカネは月末に中学のところで待ち合わせて渡していて、目標金額に達しないときは、肌が露出していない、目立たない場所を殴られてました」
いったいどんな男がそんな悪辣なことをやっていたのか。アヤメに聞くと意外な答えが返ってきた。
「A先輩は優等生です。不良じゃなくて、学校の先生に評判がいいタイプ。爽やかで、ザ・イケメンといった感じ。ずっとサッカー部でスポーツマンでした。たしか大学もMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)レベルのいいところに行ったと聞いてます」
意外ではあったが、その反面、しっくりともくる話だった。そういう男がやがて社会人となり、何事もなかったような顔をして順風満帆な人生を送っていくという不条理も、この世には存在する。それにしても醜悪な話だ。彼の人生に幸なきことを強く願う。
「援交が続いたのは高二までです。理由はわかんないんですけど、ある日ぷつりと連絡が来なくなったんです。そこで親に迷惑メールが来ると言って携帯電話の番号を変えたんです。それ以降、連絡はありません」
長期にわたる地獄の日々に、やっと終止符を打てたのである。その期間を、アヤメはどうやって乗り切ったのだろうか。
「当時は誰にも話せませんでした。中学からの友だちに後になって話すと、『だからなのね。顔色も良くなかったし、常にボーッとしてた』って言われました。私自身は本を読んだり、文章を書いているときがいちばん生きている感じがしてました。自分のなかに入って、一人で作業しているときが、なにも考えずに済んだので、良かったんです」
アヤメによれば、援交をしている期間には、恋愛もしていたようだ。だが、それも波乱に満ちていた。
「援交相手のビジュアル系バンドマンでした。私が十四歳のときに向こうは二十四歳。中三から高一まで付き合ったんですけど、いちばん大変でした。生活費とかライブ代とかのおカネをあげてたんです。だいたい月に七~八万円を渡してました。けどDV系で暴力を振るわれたりしてて……」
この時期、アヤメはA先輩に要求されるままに“上がり”を渡している。それに加えてバンドマンへ金銭を渡していたわけで、負担はすべて彼女の肉体にかかっていた。
「最後は向こうの家でその人がクスリをやっているのを見て、怖くなって逃げ出したんです。それで付き合いは終わりました」