編集者、ライターとして、公私ともに忙しく過ごしてきた。
それは楽しく刺激の多い日々……充実した毎日だと思う。
しかし。
このまま隣室との交流も薄い都会のマンションで、
これから私はどう生きるのか、そして、どう死ぬのか。
今の自分に必要なのは、地域コミュニティなのではないか……。
東京生まれ東京育ちが地方移住を思い立ち、鹿児島へ。
女の後半人生を掘り下げる、移住体験実録進行エッセイ。
2021.10.22
仕事、生活費、災害対策……移住の前に考えなければならないこと ——経済アナリスト・森永卓郎さんに聞く

仕事が減っても生活を充実させることは、果たして夢物語なのか
“四十の手習い”と合宿免許の申し込みを終え、改めて移住した場合、仕事をどうするか、生活はどう変わるのか考え始めました。
リモートワークは広がってきているものの、じゃあ私が全く仕事で外出していないかというとそういうわけではありません。打ち合わせはZoomやTeamsに切り替わってきましたが、クライアントによっては会いたいという人もいるし、撮影が必要な取材もある。ファッションの仕事ではコーディネートや撮影で出かける。鹿児島に行ったら、そう簡単に東京に行けるわけでもないし、恐らくその手の仕事のオファーも減っていくでしょう。
収入が落ちることを前提にすると、生活費を抑える必要がありますが、果たして地方で暮せば本当に生活費は下がるのでしょうか。地方での暮らしには車が必要だし、人口が少ない地域であることを考えれば保険料も上がりそうです。
自分の豊かさを享受しながら、仕事を充実させて、生活を安定させる。ただの夢物語なら、何かを妥協しなければなりません。
丁寧な暮らしがしたい、のんびりカフェを営みたい、都会生活に疲れた、自給自足的な生活がしたい……移住者が移住した理由は様々あると思いますが、私にはどれも当てはまらないような気がしました。都会生活に疲れたわけではなく、東京の変化によって今後疲れていくであろうという予測に基づいた、独り者のサバイブ術なのであります。
同じような考えのもと移住した人はいないのだろうか――と考えた時、ふと経済アナリストの森永卓郎さんが頭に浮かびました。
以前も書いたように、森永さんは格差の拡大について早々に警鐘を鳴らしていますし、著書を読むと、現在は所沢に住んでいて、博物館を管理しながら農業をやっている様子。経済について熱く議論していたかと思えば、バラエティ番組ではひょうきんな姿を披露し、何だかとても充実した生活を送っているように見えます。
森永さんなら、現実的で的確なアドバイスをくれるのでないでしょうか。ここは仕事の特権を利用させてもらって、インタビューをするしかない! とオファーしたところ、すぐにご快諾のお返事をいただけました。
森永さんが考える人間の豊かさとは何か、都会暮らしと地方暮らしの生活コストや共同体についてお話を伺ってみることにしました。