よみタイ

「あなたの卵焼きやっぱり美味しいよ」。誰かのために料理を作り、料理を褒められて泣く。私の余生はこれでいい。

ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。作家としての夢をかなえた爪切男が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったく興味がなかったのに、ひょんなことから美容と健康に目覚め……。中年男性が本気で挑む美容と健康にまつわるエッセイ連載です。

前回は美容と健康生活のきっかけとなった化粧水を使い始めてはや2年。どんな変化を遂げてきたのかを検証してみた著者。
今回は健康に大切な食事の面での振り返り。2年前は毎日、炭酸飲料とポテチだった著者が出会ったルイボスティーと自炊について。

(イラスト/山田参助)

第48回 美容は自分のために、健康は大切な人のために

(イラスト/山田参助)
(イラスト/山田参助)

 私が今、健康な日々を過ごせているのは、最愛の恋人のおかげである。正しく言えば、彼女が私についた許されないウソのおかげである。

「あなた麦茶大好きでしょ? だったら絶対これ好きだと思うよ」

 付き合い始めた当初、そう言って彼女が差し出したグラス。可愛いシロクマがプリントされたお洒落なグラスに注がれた赤褐色の飲み物が、私の人生を劇的に変えることになる。
 その飲み物の名はルイボスティー。南アフリカでは非常にポピュラーな飲み物であり、大量のミネラルを含む上にノンカフェインということで、美容や健康維持にも抜群の効果があるとされる健康茶だ。
 炭酸飲料を一日に3リットル以上がぶ飲みするという糖分過多の食生活を送っていた私を救うため、彼女が目をつけたのがルイボスティーだった。
 仄かな甘みを感じるのど越し爽やかな飲み心地。紅茶と烏龍茶のハイブリッドとでもいえばいいだろうか。普通の人なら違和感を覚えるところを、生粋の味音痴である私は、彼女が差し出したそれを完全に麦茶だと信じ込んでしまった。

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「こんなうまい麦茶、今まで飲んだことないよ。これどこのやつ?」
「南アフリカのちょっといい麦茶だよ」
「そうか……アフリカか、世界は広いな」

 正直に伝えたら「そんな横文字のお茶飲めるか!」と拒否されるのを見越した彼女のファインプレイだった。来る日も来る日もルイボスティーを飲んで飲んで飲みまくる私。二か月ほど経ってから「ごめんね、それ本当はルイボスティーっていうハーブティーなのよ」と真実を告げられても怒る気にはなれなかった。だって私はもう、身も心もルイボスティーの虜になってしまっていたのだから。

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 そんなきっかけで、ここ数年間にわたりルイボスティーを飲み続けてきた。お湯で煮出したルイボスティーを冷蔵庫で冷やして飲むのが一番のお気に入りである。ホットもいいがやはりアイスがいい。真冬であろうとも立ち食い蕎麦屋で冷やし蕎麦を頼む気質はルイボスティーに対しても変わることはない。
 近所のスーパー、成城石井、カルディなどで売っているものを手当たり次第に飲み漁ってみたが、私の好みにピッタリだったのが伊藤園の「ヘルシールイボスティー」だった。緑茶に飽き足らずルイボスティーまでも極めようというのか、伊藤園という会社はまことに恐ろしい会社である。

これを冷蔵庫で冷やしてます。
これを冷蔵庫で冷やしてます。

 最近は、有名コンビニ各社も自社ブランドのルイボスティーを販売している。私のおすすめは、Afternoon Tea監修の『ファミマル』のルイボスティーだ。渋み少なめの後味スッキリでとにかく飲みやすい。期間限定商品の「〇〇香るルイボスティー」シリーズもべらぼうに美味い。そう、ルイボスティーはフルーツと組み合わせることでさらに旨味を増すのだ。「ピーチ香るルイボスティー」がマイフェイバリィットなのだが、現在発売中の「ライチ香るルイボスティー」もこれからの暑い夏には重宝しそうである。
 熱中症対策として、外出時はマイボトルにルイボスティーを入れて携帯しているのだが、そういうときに役立つのが無印良品の水に溶かすだけの粉末タイプ。これなら面倒臭がりな人にもおすすめである。
 私が愛飲しているということで、私のファンの方で初めてルイボスティーを飲んだ人がいたのだが「正露丸の味がして不味かった」と酷評していた。うん、言いたいことはわかる。そのような人は是非グリーンルイボスティーを飲んでみて欲しい。紅茶よりも緑茶寄りのあっさりとした飲み心地なので安心して飲めると思います。

 つい最近まで炭酸飲料しか飲んでいなかったおっさんが、大学デビューした若者のようにルイボスティーについて熱弁を振るうのはいささか恥ずかしい。が、四十を過ぎてもまだ何かに夢中になれることが単純に嬉しい。
 私とルイボスティーを巡り合わせてくれた恋人には感謝してもしきれない。人間は誰だって死ぬまでに大小問わずたくさんのウソをつくのだから、それならせめて誰かのためにウソをつける人間になりたいと私は思う。

「グリーンルイボスティー」と「ライチ香るルイボスティー」 。
「グリーンルイボスティー」と「ライチ香るルイボスティー」 。
マイボトルでございます。
マイボトルでございます。

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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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