2023.1.22
カップ麺中毒の男、自炊はじめました。今日が私たちの「卵焼き記念日」です。
すると、恋人にいたっては好き嫌いが全くないときたもんだ。唯一苦手なものはブルーベリーぐらいだという。「ブルーベリーが苦手」か。なんだか逆にオシャレな感じがして腹立つな。片や私は、とにかく苦手な食べ物が多い。味がダメというよりも、その食べ物にまつわる嫌な思い出が食欲をそいでしまうのである。
たとえばソラマメ。うちの家系は代々腎臓を悪くする血筋であり、「あんたが死ぬときは腎臓の病気で死ぬやろな」と子供の頃から呪いのように言われ続けていた。そのせいで腎臓の形によく似たソラマメが嫌いになった。
続けてシイタケ。晩年にシイタケの原木栽培にハマっていた祖父は、狂ったようにシイタケの世話ばかりをしていた。挙句には今際の際までシイタケのことをつぶやいてあの世に行ったらしい。あんなに格好良くて優しかった祖父を狂わせたシイタケが憎い。だから私はシイタケが食べられない。
そして生魚。昔、貧しい我が家のことを何かにつけてバカにしてくる金持ちの親戚がいた。法事などの集まりで、そいつらがネチャネチャと下品な音を立てながら美味しそうに食べていた刺身。「貧乏人なんやから刺身はありがたく食えよ?」というあいつらの言葉を私は一生忘れない。だから私は生魚が大嫌いだ。信じられない話だろうが、生魚を食べると、お札特有のあの匂いが口の中いっぱいに広がるのだ。ここまでくると重症だ。
「わかったわかった、料理は私に任せて。そんなしょうもない思い出に負けてたまるか。いろいろ工夫して苦手なもの全部食べさせてやるからな」
私のあまりの偏食に辟易するのではないかとばかり思っていたら、その心配をよそに、恋人はメラメラと闘志をたぎらせるのであった。体力は全くないがガッツがある女。私はこの女の〝生命力〟に惚れたのかもしれない。
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