2023.1.22
カップ麺中毒の男、自炊はじめました。今日が私たちの「卵焼き記念日」です。
だが、我が家の「台所」の主であり、同棲を機に健康的な食生活を構築しようと意気込む恋人によって、カップ麺を食すことは固く禁じられることとなった。もとより覚悟はしていたものの実に悲しい。炭酸飲料だけでなく、カップ麺にもサヨナラを。両の翼をもぎ取られたような深い深い絶望に私は胸を苛まれる。
いや、まだ交渉の余地はある。二度と食べられないなんてさすがにひどすぎる。年に一度の夏祭りの日を待ちわびる子供のように、年に一度の七夕の日を胸焦がして待つ彦星と織姫のように、私にだって年に一度ぐらい、カップ麺を心ゆくまで食べられる日があったっていいじゃないか。
私は強い気持ちを持って恋人との交渉の席に着く。この人だって鬼ではない。話せばきっとわかってくれる。こちらの熱意が伝われば「うん、わかった。でも年に一度と言わず月に一度食べてもいいよ」と意地らしいことを言ってくれそうな気もする。うん、我に勝算あり。
「じゃあ年に四回食べていいよ。春、夏、秋、冬で季節ごとに食べるの面白そうじゃん」
鬼だ。鬼がいた。
いや、一食が四食に増えたのだから万々歳か。ここはポジティブに受け止めよう。春は春野菜をふんだんに盛り合わせた「サッポロ一番」を。夏にはちょっとしたお祭り気分を味わうために「ペヤングソース焼きそば」を。中秋の名月を眺めながら、「チキンラーメン」の上に卵を落とし、月見カップ麺といくのも乙なものだ。そして大晦日には、一年の総決算として「緑のたぬき」を年越し蕎麦として大いに食らおうじゃないか。
しかし、カップ麺でこのザマでは先が思いやられる。これからの共同生活をよりよいものにするためにも、まずは「食」に関する共通認識を持つことが先決だ。
そこで私たちは、お互いの食の嗜好を紙にザラっと書き出すことに。好きなものと苦手なものを嘘偽りなく全て曝け出す。
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