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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

20年ぶりに新人同士の激戦! 兵庫県知事選挙は5人の候補をメディアがしっかり伝えていた。

投票率は41.10%で前回を0.24ポイントだけ上回った。

 私はすっかり「選挙を楽しむ側の人間」になっている。選挙に参加して喜びを爆発させる人、敗れて悔し涙を流す人の姿を見ることに慣れている。そこに人間の営みや、政治に関わることの素晴らしさを感じている。だから選挙を追うことをやめられない。
 しかし、世の中にはそうではない人たちがたくさんいる。今回の兵庫県知事選挙は、そのことを改めて思い出させてくれる機会となった。

 投票率は41.10%で、40.86%だった前回(2017年)を0.24ポイント上回った。それでも参議院議員選挙と同日選挙だった前々回(2013年)の投票率(53.47%)には遠く及ばない。2回連続で、6割近い人たちが選挙に行かない選択をしているということだ。

 ここで私がみなさんに伝えたいことは何か。

 それは積極的に選挙に参加して、コロナ禍にあっても「ウェ〜イ!」と明るく喜びを爆発させる人たちが実際の政治を動かしていくという現実だ。多くの有権者が興味を失って投票に行かなければ、積極的に政治に参加する人たちの影響力はどんどん増していく。とにかく参加しなければ、あなたの意思が政治に反映される機会は著しく減少する。これは動かしようのない事実である。

 それでは、今回の兵庫県知事選挙は「面白くない選挙」「行く価値のない選挙」だったのだろうか?

 私はそうは思わない。今回の知事選挙には5期20年務めた井戸敏三知事が出馬せず、20年ぶりに新人同士の戦いになっていたからだ。
 つまり、誰もが「新人」。しかも、自民党内が齋藤候補と金沢候補に割れ、「保守分裂」の構図になっていた。
 大阪では自民党を厳しく批判してきた日本維新の会は、今回の兵庫県知事選挙では斎藤候補に推薦を出した。自民党も斎藤候補を推薦した。
 政治の世界では対立する陣営を批判する際、「選挙のために手を結んでいる。野合だ」という常套句がある。しかし、選挙に勝つためには、時としてこの言葉はどこかへ行ってしまう。選挙に勝つことが政治に影響力を持つための近道だから、極めて当然の選択だ。

 一方、自民党の方針に反発した自民党の県議らは、前副知事の金沢和夫候補を推した。井戸敏三知事も金沢候補を応援した。金沢候補は立憲民主と国民民主の両党県連からも支援を受け、「県民党」を標榜した。
 どちらも「選挙を知っている人たち」の戦いだった。街頭演説の場所には多くの支援者が駆けつけ、手慣れた様子でビラ配りや有権者への声がけなどを行っていた。

 斎藤候補の応援演説にやってきた日本維新の会の吉村洋文副代表(大阪府知事)は、昨年10月に井戸知事が公用車をトヨタの最高級車センチュリーに変更したことを持ち出して、こう叫んでいた。

「みなさんの大切な税金でセンチュリー買うような時代ではないんです!」

 この演説に支援者たちは「そうだ!」という掛け声で反応する。選挙カーの半径50m以内はものすごく盛り上がる選挙戦だ。私のような選挙好きにとって、各陣営の奮闘は大変に見応えのあるものだった。
 しかし、これはあくまでも政治に興味がある人たちの見方にすぎない。
 最終的な投票率を見てもわかるように、政治にあまり興味のない人たちを積極的に投票所に向かわせることにはつながっていない。この壁を乗り越えるのは、とても難しい。

斎藤候補(写真中央)の応援演説にやってきたのは日本維新の会の松井代表と吉村副代表。また斎藤事務所の一番目立つ場所には「自由民主党総裁 菅義偉」「自由民主党幹事長 二階俊博」の為書きも。(撮影/畠山理仁)
斎藤候補(写真中央)の応援演説にやってきたのは日本維新の会の松井代表と吉村副代表。また斎藤事務所の一番目立つ場所には「自由民主党総裁 菅義偉」「自由民主党幹事長 二階俊博」の為書きも。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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