よみタイ

畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

NHKの出口調査も有権者との握手もなし? 新型コロナウイルス禍に行われた熊本県知事選挙、現地ルポ

市内を練り歩く幸山候補。有権者と距離をとっての選挙戦となった。(撮影/畠山理仁)
市内を練り歩く幸山候補。有権者と距離をとっての選挙戦となった。(撮影/畠山理仁)

「握った手の数しか票は出ない」のに……。

 ふたたび幸山候補の遊説を追いかけた。最終日、19時台の予定は繁華街の2ヶ所。1ヶ所目を終えた後は商店街のアーケードを練り歩いて最終演説場所に向かう予定だ。
 選挙戦最終日の打ち上げということもあり、1ヶ所目から多くの人が集まった。マスクをしている人もいれば、していない人もいる。

 しかし、団地と違って聴衆も多いため「こうやまー!」と掛け声がかかったり、幸山コールが起きたりして大いに盛り上がる。

 1ヶ所目を終えると、最終演説の場所までは候補者と支援者が一緒に歩いて向かう。大きな人波だ。候補者を見つけた有権者が手を振ると、幸山候補が駆け寄る。そして、エア・ハイタッチ。
 ところが、選挙運動の残り時間が少なくなると、急激に候補者と支援者の距離が近くなる。みんな一生懸命応援しているから、興奮して距離が近くなるのだ。

 あ!

 これまでは、エア・ハイタッチを貫いていた幸山候補だったが、最後はついに支援者と手を合わせた。最初は片手。だんだん両手になる。それを見て、今度は他の支援者が握手を求める。候補者が応じると、また別の支援者が握手を求める。そうして、だんだん握手が両手になっていく。エア・ハイタッチはどこへいった。大丈夫なのか。

 しかし、選挙には「握った手の数しか票は出ない」という格言もある。候補者に「握手するな」という方が無理だ。今回、蒲島陣営が選挙運動を一切しなかった理由の一つも、「候補者本人が街頭に出たら、どうしても人が集まってしまう」というものだった。こうしたリスクや無用な心配を避けるためにも、やはり、選挙は延期したほうがよかったのではないか。
 
 選挙なのに有権者と触れ合えない。これは候補者にとって死活問題だろう。実際、蒲島氏は選挙運動ゼロの知事選を振り返り、「非常にストレスであり不安であった」と語った。
 このような状況で選挙を迎えた候補者、そして熊本県民のみなさんに心から同情する。

1 2 3 4

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

週間ランキング 今読まれているホットな記事