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政策ブラインドテストでわかる「日本の有権者は本当に政策を重視して投票しているんですか問題」

「政策重視」の有権者がすべきこと

 この「政策ブラインドテスト」は本当に面白い。私が講演で訪れた関東地方のある県では、直近の知事選挙の選挙公報を使ったブラインドテストで真逆の結果が出た。トリプルスコアに近い大差で落選した候補の政策が、当選した候補の政策よりも大きな支持を集めたのだ。

 もちろん、講演を聞いた人たちの年齢層が偏っていたことも原因の一つである。この時の講演の聴衆は、選挙権を持たない高校2年生だった。私から実際の選挙結果を知らされた高校生たちは「なんで!?」と大いに驚いていた。

 私は「家に帰ったら保護者の皆さんに『真逆の結果が出たのはなぜ?』と聞いてみて下さい」と伝えた。もし、高校生たちに選挙権があれば、実際の選挙結果は変わっていたかもしれない。今はまだ選挙権がなくても、あなたの一票、あなたの世代の一票一票には力があると感じてもらえたと思う。

 実際の選挙結果と会場の結果が異なるケースは大人が対象の講演会でも起きる。それくらい、他人の票はどうなるかわからない。まず大切なのは自分の一票だ。
 だからこそ、みなさんもいろいろと選挙にまつわる実験やシミュレーションをしてみてほしい。そして後悔のない投票をしてほしい。

 たとえばスウェーデンでは、4年に一度の国政選挙の際、多くの高校で模擬投票が行われている。高校生が全国的な委員会を作り、実際の政党名を書き込んで投票を体験する。そして投票結果は公表される。

 数年後には有権者になる人たちの投票結果だから、各政党も無視できない。こうした「主権者教育」に取り組んでいるスウェーデンでは、過去50年間、国政選挙での投票率が80%を下回ったことがない。世界の事例から学べることはたくさんある。

 私はこのブラインドテストを繰り返すことで、一つの問題意識に到達した。私はそれを「日本の有権者は本当に政策を重視して投票しているんですか問題」と名付けている。

 みなさんも実際の選挙の際、選挙公報の名前や顔写真を隠して「ブラインドテスト」をやってみてほしい。そうすると、みなさんの希望通り、本当の意味で「政策」を重視した投票行動ができるようになると思う。

 ちなみに私は、投票所の前にある掲示板に貼られたポスターだけで判断しないほうがいいと思っている。ポスターはスペースが限られているため、そこに政策を盛り込むことが物理的に難しいからだ。

 さらに言えば、私は街頭演説の現場で「ポスターに載っている顔写真の人を探したけれど、ぜんぜん見つけられない」という経験をしたことが何度もある。

 本当だ。演説会の最後の最後に「候補者本人からの訴えです」と司会者が紹介したことで、ようやく「え! この人だったのか! 写真と実物が違いすぎる!」と驚いたことは一度や二度ではない。やはり実際に候補者を見たほうがいい。

 最後に念押しをしたい。もし、あなたが本当に「政策を重視する」というのであれば、最低でも、「選挙の際に候補者が何を言っていたのか」「何を有権者と約束していたのか」を忘れないでほしい。私は選挙の際に「花粉症ゼロ」「2階建て車両で満員電車ゼロ」「3年半で辞職も選択肢」などと主張した候補が当選したことを、いまも鮮明に覚えている。

 有権者が簡単に忘れてしまうと、候補者の「言いっぱなし」を許すことになる。本当に「政策」で選んでいるというのなら、そこは絶対に譲れない一線だろう。

 もし、私があなたの街に講演に行く機会があれば、きっとクイズを出す。どうか全問正解して、私を驚かせてほしい。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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