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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

大人のための「公職選挙法」講座、街宣車編。ウグイス嬢の日当1万5千円は妥当か?

近年、時間や住宅街でのボリュームなど、街宣車の運用も昔とはかなり変わってきた。(撮影/畠山理仁)
近年、時間や住宅街でのボリュームなど、街宣車の運用も昔とはかなり変わってきた。(撮影/畠山理仁)

「街宣車ゼロ社会」にするためには?

 もちろん選挙において「街宣車を使わない候補者」もいる。市区町村レベルの選挙では、使わなくても当選する人もいる。

 ただし、選挙区が大きくなれば話は別だ。街宣車なしで当選できた人は、青島幸男・元東京都知事など、もともと知名度が高かった人に限られる。街宣車を使わないことが有利に働くことは、ほとんどないと言ってもいい。
 なぜなら、「私が投票するのは、絶対に街宣車を使わない人!」という有権者がそれほど多くないからだ。

 日本の選挙は「足し算」だ。有権者が「街宣車でうるさい候補には絶対に入れたくない」という感情を抱いても、「マイナス票」として表現する仕組みはない。「なんとなくの一票」でも、より多く得票した候補が勝つ。候補者が有権者との接触機会を増やして認知度を高めようとするのは当然だろう。

 街宣車を使わなければ、立候補している事実も知られずに選挙が終わる。何度も立候補して落選している候補者が、街宣車を走らせた途端に得票が何倍にも増えた例もある。
「街宣車って、効果あるんだね〜。次からは使わないなんてことは考えられない」
 私が何年も取材してきた候補者の1人は、生き生きとした表情でそう語っていた。

 それでは、選挙のたびに「お騒がせ」する街宣車をなくすことはできないのか?
 私の答えは「多くの有権者が望めば不可能ではない」だ。
 実際、有権者からの「うるさい」という声を受け、街宣車の運用も昔とはかなり変わってきた。週末の午前中は街宣車のスタート時間をお昼近くまで遅らせたり、走る場所を工夫したり、住宅街ではボリュームを落としてゆっくり話すようにしたりするなどの配慮が一般的になってきている。

 もっとも簡単な方法は、有権者が普段から政治家や候補者とコミュニケーションを取ることだ。「街宣車がうるさい」と思う人は、ぜひ、候補者の心に刺さるような抗議をしてほしい。候補者に「もう街宣車は必要ない」「街宣車を走らせないほうが有利」と思わせることができれば、選挙運動のあり方が変わる可能性がある。「街宣車は全面禁止」と法律を変えることも可能になる。

 政治のあり方は、あなたの意識次第で変えられる。なぜならこの国の主権者は、政治家ではなく有権者だからだ。

聴衆がたった一人でも街宣車は停まる。選挙は意見交換の機会でもある。(撮影/畠山理仁)
聴衆がたった一人でも街宣車は停まる。選挙は意見交換の機会でもある。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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