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台湾、アメリカ……世界の選挙と比べて考えた、「日本人はもっと選挙を楽しむべき」だ

デザートが配られるとみんなが殺到していた台湾総統選挙の一コマ。なんだか楽しそう。(撮影/畠山理仁)
デザートが配られるとみんなが殺到していた台湾総統選挙の一コマ。なんだか楽しそう。(撮影/畠山理仁)

選挙を楽しむ基本情報の探し方、教えます

 残念ながら今のところ「国会議員チップス」は商品化されていない。だが、それに近い基礎情報が載った書籍は存在する。それが国政情報センターが発売する『國會議員要覧』(2,720円+税。最新版は令和元年11月版)だ。

 ここには現職議員に関する基礎情報が網羅されている。別冊には出身高校一覧や、生まれ年表、当選回数表などもついている。顔写真も掲載されているから、街で見かけた政治家の顔とプロフィール写真がどれくらい違うかを比較するという楽しみ方もできる。政治の世界の『プロ野球年鑑』みたいなものだ。

 こうした書籍以外にも、公的情報を利用する方法もある。私がとくにオススメしたいのは、選挙の際に発行される「選挙公報」だ。

 選挙公報とは、選挙の際に選挙管理委員会が発行するものだ。各候補者に同じスペースが割り当てられ、それぞれが自分の政治姿勢や主張を訴える。それが選挙ごとに一つの新聞のような形になって提供されている。
 選挙公報は基本的に選挙区内に全戸配布されるが、東日本大震災以降は、各選挙管理委員会のウェブサイトにも掲載されるようになった。そのため、全国どこからでも閲覧可能だ。できればダウンロードして手元に置いておくことを推奨したい。
 選挙公報は候補者が有権者に対して約束したものだから資料的価値が非常に高い。選挙公報での約束と現在の仕事ぶりとの間にギャップがないかどうかを見るだけでも、政治家を評価する時の大きな指標になる。

 ただし、注意も必要だ。国政選挙の選挙公報は選挙後もサイトに残るが、首長選挙や地方議会の選挙の場合、投票終了と同時に消されることがあるからだ。この取り扱いは、各選挙管理委員会の判断に任されている。だから選挙期間中にダウンロードしておかないと、任期中であっても見られなくなっている可能性がある。
 選挙公報は、有権者との約束。いわば契約書のようなものだ。それが投票締切とともに消されてしまうのは不思議だ。そのため私は昨年4月から、選挙ライターの宮原ジェフリー氏と一緒にインターネット上の署名サイト「change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で署名キャンペーンを始めた。

 すでに昨年7月1日の段階で、17300筆もの署名を総務省に提出した。署名は現在も続いている。もし賛同してもらえるなら、みなさんもぜひ署名してほしい。

 そしてもう一つ、選挙の情報を網羅した便利なサイトを紹介したい。それが『選挙ドットコム』だ。

 ここには過去の選挙日程や選挙結果だけでなく、これから行なわれる選挙のスケジュールが網羅されている。自分の住んでいる地域の郵便番号を登録すれば、ユーザーにあわせた選挙予定もわかる。

 「政治や選挙は難しい」という先入観から解放されれば、選挙の楽しみ方は無限にある。
 たとえば、各政党の街頭演説会を観に行けば、聴衆の服装や態度にも党派ごとの違いが見て取れる。夏場の選挙であれば、公明党や共産党の選挙演説を聴きに来る人たちの多くは、ちゃんと帽子をかぶっている。これだけでも「選挙慣れ」している人が多いとわかる。
 もちろん候補者の公式サイトを見るだけでもいい。もっと面白いのは、一発勝負のライブである街頭演説を見ることだ。お決まりのコール・アンド・レスポンスもあれば、思いがけないトラブルも起きる。それを見にいくだけでも楽しみは広がる。しかも、選挙運動は誰もがすべて無料で見ることができる。

 みなさんもぜひ、税金で行なわれる選挙をとことん楽しんでほしい。一度でも現場に足を運べば、確実に何かが変わるはずだ。

(文中敬称略/次回は1月20日月曜夜9時配信予定です)

【「選挙漫遊記」がさらに面白くなる関連リンクはこちらから!】

「總統府大冒險」

『国政情報センター』

「選挙公報を消さないで下さい」

『選挙ドットコム』の選挙スケジュール

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新刊紹介

畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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