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爪切男「クラスメイトの女子、全員好きでした」

1995年のカヒミ・カリィ・シンドローム

 秋山さん、お元気ですか? ジャパンです。
 親には申し訳ないのですが、私は自分の名前が好きではありません。
 姓名判断でもその結果は最悪で、何も良い所がないのです。
 だから、秋山さんに「ジャパン」という名をもらったとき、私はようやく本当の名前で呼んでもらえたような、そんな不思議な喜びがありました。
 あなたが自分の子供にどんな名前を付けたのか、とても気になります。

 そしてどういうわけか、あなたよりセンスのない私が、今は作家を生業にしています。
 爪切男つめきりおという変な名前ですが。
 実はこの名前もある女性に付けてもらいました。
 大学生の時に出会い系で知り合った女性です。
 今と違って通話料金も高く、彼女との連絡で毎月の電話代が馬鹿にならなくなった私は、インターネットのチャットルームを使い、無料で連絡を取り合うことを思いつきました。
 チャットの利用にはID登録が必要だったのですが、良い名前が浮かばなかった私は、彼女に考えてもらうことにしました。
「じゃあ、爪切男でよくない? 理由? 私が今爪切ってるから」
 そんな適当な理由で生まれた名前なのに、どうにもそれがしっくりときてしまい、今も愛用しているわけです。
 しかし、あなたといい、出会い系の彼女といい、私は女性に名前を付けてもらうことに快感を覚えるみたいです。
 私に母親がいないのも影響しているんでしょうか。

 まぁ、それは別にいいとして。
 今ならわかる。
 秋山沙織さん。
 あなたは、私が今まで出会ってきた中で一番オシャレな女の子です。
 私はそんなあなたが大好きでした。
 秋山さんに付けてもらった「ジャパン」という名は生涯忘れないでしょう。
 さようなら、そしてありがとう、一九九五年のカヒミ・カリィよ。

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爪切男

つめ・きりお●作家。東京都中野区在住。2018年1月、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。現在、週刊SPA!にて勤労エッセイ『働きアリに花束を』を連載中。2019年11月末に扶桑社より文庫版『死にたい夜にかぎって』発売予定。また、中央公論新社BOCにて好評を博した『男じゃない女じゃない仏じゃない』も来年書籍化予定。トークショー、物言わぬ変人役でのドラマ出演、サウナコンテストの審査員など、作家以外の活動も多種にわたって迷走中。

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