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爪切男「クラスメイトの女子、全員好きでした」
小学校から大学まで――
さまざまなクラスで、それぞれの出会いがあった。
教室で、体育館で、廊下で、校庭で……。
時が経っても鮮明に思い出す彼女たちの面影。
ロングセラー『死にたい夜にかぎって』の著者が贈るスクールエッセイ。

前回は、ショートカットが似合うソフトボール部の幼なじみとのお話でした。
今回は、中学時代の猫顔美人とオカルティック&ロマンティックなストーリーです。

霊能力美少女と肝試し大会とSMAPと

「キミ、肩の辺りに変な霊が憑いてる。このままだと死ぬかもよ」
 
 鮮やかな茜色が差し込む十二月の放課後、中学三年生の高城たかぎ優子ゆうこは、日直日誌を書いている私に向かってそう言い放つ。宝生舞によく似たショートカットの猫顔美人。わざと大きめのサイズの冬服を着ているのか、袖がちょっとブカブカになっていて、それがなんとも可愛らしい。

「マジで? じゃあ念のために除霊してよ」と助けを求める私。「仕方ないなぁ」と、彼女は自分の学生鞄から銀の音叉おんさと水晶のペンダントをおもむろに取り出した。

「まずは場を整えるよ」と言って、彼女は音叉を二度三度打ち鳴らす。二人きりの教室に「チーンチーン」と柔らかく澄んだ音色が鳴り響く。霊力を増加させる水晶を首にかけ、静かに目を閉じて精神統一をする高城さん。キスする時もこんな顔でするのかなぁ。そんな私の邪念に気付く様子もなく、両手の指を組み、九字のいんを唱える姿勢に入る彼女。
 
 両人差し指を立てて「りん!」と力強い声を出す彼女。次に「ぴょう!」、そのまま「とうしゃかいじんれつざいぜん」と九つの印を唱え、「ヲンキリキャラハラ……」と、何やら結びの呪文をつぶやいて除霊は終了となった。
 
 高城さんはいたって真剣にやっているのだが、こちらからすれば、女の子が「臨・兵・闘・者……」と印を唱える姿は滑稽で仕方がない。笑いをこらえるのに必死だった。

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爪切男

つめ・きりお●作家。東京都中野区在住。2018年1月、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。現在、週刊SPA!にて勤労エッセイ『働きアリに花束を』を連載中。2019年11月末に扶桑社より文庫版『死にたい夜にかぎって』発売予定。また、中央公論新社BOCにて好評を博した『男じゃない女じゃない仏じゃない』も来年書籍化予定。トークショー、物言わぬ変人役でのドラマ出演、サウナコンテストの審査員など、作家以外の活動も多種にわたって迷走中。

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