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爪切男「クラスメイトの女子、全員好きでした」

幼なじみの罪とヤマボウシは蜜の味

 二〇一七年十一月。東京で暮らす私のもとに、地元の香川県から結婚式の招待状が届いた。差出人はナッちゃんだった。四十歳の大台に乗る前に、ようやく貰い手が見つかったらしい。
 出欠を確認するハガキを取り出し、欠席に大きく丸を付けた私は、余白の部分にメッセージを書いた。

 ナッちゃん。結婚おめでとうございます。あの盗んだシルバニアファミリーなんですけど、結局もとの人に返さなかったでしょ。俺は何でも知ってます。
 ナッちゃん。シルバニアファミリーに負けない幸せな家族を作ってくださいね。

 そして、ここからは書かなかったメッセージ。
 西山奈都己さん、私はあなたが居てくれたおかげで、自分が貧乏な家に生まれたことを不幸だと思わずに済みました。同じように貧乏なあなたと出会えたからです。
 どうか丈夫な子供を、できれば娘さんを産んでください。あなたの子供が大きくなったら、私がシルバニアファミリーの豪華セットを買ってあげます。娘さんに「シルバニアのおじさん」と呼ばれるぐらいにしつこく買うつもりです。
 そして今なら言える。私は西山奈都己さん、あなたのことが好きでした。
 でも普通の好きとはちょっと違う。
 私はあなたと血の繋がってない家族になりたかったんだと思います。
 ありがとう。お幸せに。

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爪切男

つめ・きりお●作家。東京都中野区在住。2018年1月、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。現在、週刊SPA!にて勤労エッセイ『働きアリに花束を』を連載中。2019年11月末に扶桑社より文庫版『死にたい夜にかぎって』発売予定。また、中央公論新社BOCにて好評を博した『男じゃない女じゃない仏じゃない』も来年書籍化予定。トークショー、物言わぬ変人役でのドラマ出演、サウナコンテストの審査員など、作家以外の活動も多種にわたって迷走中。

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