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稲田ズイキ「罰当たりなほどにユルくてポップな仏教トーク」

今年の煩悩、今年のうちに! 除夜の鐘は心の大掃除だった

じゃあ具体的になんなのかというと、代表的なものが、とんじんから構成される「三毒」と呼ばれるものだ。
いかにも健康に悪そうな名前をしているが、心に三毒を宿していない人はいないと言い切れるくらいには普遍的な要素。(ちなみに、今年5月にリリースされた椎名林檎の6thアルバムのタイトルは『三毒史』。来てるの? 三毒ブーム)

いわばそんな煩悩ビッグ3の一つ、「貪」とは、貪欲とんよくのことで、要するに欲することだ。
すなわち「もっと美味いもん食いてぇ!」「もっと美形になりてぇ!」という心の状態。なるほど、いつもの僕じゃないか。

先ほど年末に感じたソワソワ感は、まさにこの貪欲でカラカラに枯渇した心が原因だ。もっとやりたいことがあるのに、何も実現できていない。でももう一年が経ってしまった。もっと楽しいことがしたい! まだ! ま゛た゛死゛に゛た゛く゛な゛い゛!!!!

悲しい哉、こうした欲望に現実は応えてくれない。どれだけ望んでも過去の時間は戻らないし、もし一時的に「楽しい」ことを実現したとしても、それで満たされることはない。さらにもっと楽しいこと、さらにもっと別の刺激を求めてしまう。「欲望はとめどない」というのがブッダの導き出したマジ真理なのだ。

第二に、「しん」とは、瞋恚しんにともいわれ、気に入らないことに対して嫌だと思うことをいう。怒りや憎しみ、嫉妬、自分がないがしろにされたという感情なども含まれる。

すなわち「ハァ? マジうざいんですけど?」「なんでこいつだけこんなにいいね!付いて俺のは付かんの?」という心の状態。なるほど、SNSを眺めているときの僕である。年末Facebookに投稿される「今年のまとめ」的な、いかにもキラキラした投稿を見て、キィィィと煮え繰り返るこのはらわたは、ちょっとした大田区くらいは破壊できそうである。まさしく瞋。瞋・ゴジラ。
貪が自分が愛するものを取り込もうとする心の働きであるとするならば、瞋とは自分が気に入らないものを排斥しようとする心の働きと説明することができるだろう。

ビッグ3のラスト、煩悩界のビートたけし(?)が、根本原因とも言われるである。別名、愚痴ぐちとも言われるが、「ちょー聞いてうちの旦那がさぁ、マジでありえなくてぇ〜」という現代でいう愚痴の類ではなく、もっとシンプルに「愚か」であることを指す。すなわち、「俺には俺のやり方があるから!」と盲信したり、「なんで幸せになれないんだろう」とamazonで「幸せ」と検索することなどをいう。うん、これもいつかの僕だ。

痴は、別名「無明むみょう」とも言われ、光がなく暗闇の状態。
ものの道理がわかっていなかったり、勝手にわかった気になっていたり。そもそも、人生なんて1日1日はたまた1秒1秒の繰り返しであるのに、年末になってやっと時の流れを感知して、ギャーギャー騒ぐというのは、まさしく愚かである。なに僕、さっきから自分にドSすぎない?

仏教では、この煩悩ビッグ3、貪・瞋・痴の3つを三毒と呼び、僕らの心や体を乱して、正しい判断を邪魔してくるものと定義する
「良いお年を〜!」と聞いて、ソワソワしていた僕は心に発生した煩悩にバグを起こされている状態だったのだ。

なぜ除夜の鐘は108回叩くのか

仏教はそんな煩悩と向き合い、苦しみから解放されることを目的にしている。いやいや、そんな煩悩まみれな僧侶に煩悩と向き合えなんて言われても説得力ねぇぇぇと言われそうだけど、どうかお手柔らかに。同じ修行仲間だと思って、一緒に煩悩と上手く付き合っていこうじゃありませんか。

そこで、同じ煩悩ブラザーのみなさんに朗報なんだけど、例の、除夜の鐘って知ってる? あれ、どうやら煩悩がなくなるらしいよ。
え、マジ?

除夜の鐘って、あの大晦日に、『紅白歌合戦』の後にやってる、毎年坊主が鐘鳴らしてるあれです、あれあれ。

僕は「もし自分があの鐘叩く役に当たったら」って考えるだけで、毎年吐きそうになりながら見てる。
聞きたいんですけど、もしあなたが僧侶なら、紅白歌合戦の大団円の後にいけますか? 嵐・サザンオールスターズの後にいけますか? 
国民的歌手・国民的スター・僧侶という聖徳太子もびっくりのラインナップになっているわけですよ、大晦日のNHKは。
普通の神経だったら国民の一年を背負ってゴーンといけません。もしあそこで鐘打つのミスったりしたら、来る年も来ないという状況なわけで。あの鐘を鳴らすのは坊主、って本当やめてマジで。

脱線した。
除夜の鐘の謂れにはいろんな説があって、108回鐘を鳴らすところもあれば18回だけ鳴らすところも多いのだけど、その「108」というのが煩悩の数であり、一年で生じた煩悩を滅するために鐘を鳴らしているというのが有力説なのだそうだ。

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稲田ズイキ

いなだ・ずいき●僧侶。1992年京都の月仲山称名寺生まれで現・副住職。同志社大学を卒業、同大学院法学研究科を中退、その後デジタルエージェンシー企業インフォバーンに入社。2018年に独立し、寺に定住せず煩悩タップリな企画をやる「煩悩クリエイター」として活動中。コラム連載など、文筆業のかたわら、お寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」や失恋浄化バー「失恋供養」、煩悩浄化トークイベント「煩悩ナイト」などリアルイベントを企画しています。フリースタイルな僧侶たちWeb編集長。Twitter @andymizuki
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竹内佐千子

たけうち・さちこ●漫画家。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。
自身の恋愛体験を描いたコミックエッセイをはじめ、おっかけ、腐女子、などをテーマにしたコミックエッセイを描き続け、最近はストーリー漫画も描いている。
赤ちゃん本部長』(講談社)、『生きるために必要だから、イケメンに会いに行った。』(ぶんか社)など。
ホームページhttp://takeuchisachiko.jp/
Twitter @takeuchisachiko

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