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諸行無常とは、いつか必ず訪れるアイドルの卒業みたいなものだ

坊主なのに煩悩まみれ。 そんな俗世と浄土を行き来する、ユル〜い僧侶・稲田ズイキがお届けする仏教トーク。 聞いたことはあるけど詳しく知らない仏教の知恵を、罰当たりなくらいポップにわかりやすく変換していきます。

どうも、稲田ズイキです。正真正銘ガチの僧侶で、ライターとしても活動しています。

京都のお寺の副住職をやりつつ、フリースタイルな僧侶たちというWebメディアで編集長をしていたり、お宅を訪問してダンボールを供養する連載や、時には「仏教×カルチャー」をテーマにしたコラム連載野菜でグラビアを撮影するなど、煩悩にまみれながら仏教の未知なる可能性を探求しています。

こんな活動を続けている中で、つくづく思うのが「仏教は最高におもしろい!」ということ。
2500年前から現代まで、全世界で愛され続けている唯一のカルチャーなんじゃないかと思っているんです。

でも、よく言われるのが「仏教は小難しい」ということです。
仏教用語って漢字が多いし、覚えないといけないマナーとかもありそうで、取っ付きづらいですよね。

そこで、そんな難解そうな仏教の知恵を、現代風にわかりやすく変換してお伝えするのが、この連載。
記念すべき第1回は「諸行無常」です。

今回は、誰もが聞いたことがある「諸行無常」という仏教の教えを、わかりやすく、砕きに砕いて伝えるために、アイドルとオタクの関係に置き換えて説明したいと思います。

諸行無常とは、いつか必ず訪れるアイドルの卒業みたいなものだ

まず、その意味をご存知だろうか。
辞書などを引けば、必ずこのような説明がされているはず。

「この世のすべての存在は、姿も本質も常に変化し、一瞬といえども存在は同一性を保持することができない」

むずい。むずすぎる。僕は「〜〜性」という言葉が一番苦手である。
まぁ、難しいのもそのはずで、諸行無常は仏教の中でも、ベストスリーに入るくらい根本となる教えなのだ。おでんの具材で喩えるなら、もう大根を超えて出汁である。
もしこの諸行無常が完全に分かっているとなれば、もはや釈迦と肩を組んで「ブラザー」なんて言えるくらいスゴイことになる。

では、これをわかりやすく、アイドルとオタクに変換してみよう。

時として、アイドルオタクはアイドルに対し「いつまでもアイドルを続けてくれる」と錯覚しがちだ。

しかし、それは夢なのである。
現実は、グループアイドルも、アイドル声優も、ジャニーズだって、誰もが例にも漏れず有限なのである。
卒業することもあるし、急に熱愛が発覚して脱退することだってザラだ。
「いつかはアイドルと会えなくなってしまう」

これが「この世の全ての存在は変化し続ける」と謳う諸行無常の世界。
決して避けることはできないこの世の真理なのである。

諸行無常、辛すぎる問題

おわかりだろうか? 

辛すぎるのだ。

諸行無常、辛い。残酷すぎ。
おい仏教、なんてひどいこと言うのか。
頼むからもっとJ-POPみたいな綺麗事を語ってくれ。
平井堅みたいにYour love foreverだって言ってくれよ!!!!!

諸行無常なんて冷酷な真理を提唱したブッダは知らないのだろう。
推しの卒業発表があった日の、あの絶望を。

「◯◯に関する大切なお知らせ」っていう文字並びを見るだけで悪寒が走り、食は喉を通らず、一日中虚ろな眼でTwitterと5chを眺め続ける。強制的に魂は浄土あの世へ送検させられるのだ。

木の下で瞑想なんかしている場合じゃない、試しに武道館の卒コンに行ってみろ!
そしたら、オタク側の気持ちも悟れるはずだ。

「永遠なるものの存在はあるとは言い切れないものの、ないわけでもない場合も少なくない」
これくらいの希望は、残してくれてもいいと思うのだ。
リアリストなブッダより、ロマンチックな一面もあるブッダでいてほしいと切に願う。
オタクにとって「もう二度と会えない」という現実ほど心をえぐるものはないのである。

大事な存在であればあるほど、それがない人生を想像することができない。
割り切れないのがオタクなのである。

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稲田ズイキ

いなだ・ずいき●僧侶。1992年京都の月仲山称名寺生まれで現・副住職。同志社大学を卒業、同大学院法学研究科を中退、その後デジタルエージェンシー企業インフォバーンに入社。2018年に独立し、寺に定住せず煩悩タップリな企画をやる「煩悩クリエイター」として活動中。コラム連載など、文筆業のかたわら、お寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」や失恋浄化バー「失恋供養」、煩悩浄化トークイベント「煩悩ナイト」などリアルイベントを企画しています。フリースタイルな僧侶たちWeb編集長。Twitter @andymizuki
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竹内佐千子

たけうち・さちこ●漫画家。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。
自身の恋愛体験を描いたコミックエッセイをはじめ、おっかけ、腐女子、などをテーマにしたコミックエッセイを描き続け、最近はストーリー漫画も描いている。
赤ちゃん本部長』(講談社)、『これからは、イケメンのことだけ考えて生きていく。』(ぶんか社)など。
ホームページhttp://takeuchisachiko.jp/
Twitter @takeuchisachiko

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