よみタイ

稲田ズイキ「罰当たりなほどにユルくてポップな仏教トーク」
坊主なのに煩悩まみれ。
そんな俗世と浄土を行き来する、ユル〜い僧侶・稲田ズイキがお届けする仏教トーク。
聞いたことはあるけど詳しく知らない仏教の知恵を、罰当たりなくらいポップにわかりやすく変換していきます。

記念すべき第一回目はアイドルの卒業と「諸行無常」がテーマでしたが、今回は…?

読経は呪文ではなく必殺技名の叫びだ

「お坊さんって、なんで呪文を唱えているんですか?」

よく言われる質問だ。
お坊さんだとリア友にバラした際、飛んでくる質問第1位が「滝に打たれるんですか?」だとしたら、第2位は「あの呪文みたいなやつ、言えるんですか?」である。

お経は呪文に聞こえるらしい。まぁそりゃそうだ。目の前でいきなり、

「ガ〜〜〜ンガ〜〜〜〜シンジョ〜〜〜〜〜ニョコウロ〜〜〜〜〜〜」

なんて叫ばれたら、「デーモン召喚してんの?」と思う気持ちはわかる。

だけど、今回は言わせてもらおう。お経は呪文ではない。

バルスでもなければ、エクスペクト・パトローナムでもない。
ピーリカピリララ ポポリナペーペルトでもなければ、滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる 爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ 破道の九十『黒棺』でもないのだ。

どちらかといえば、お経とは、か〜〜〜め〜〜は〜〜〜め〜〜〜〜波〜〜であり、ゴムゴムの〜〜〜〜〜〜〜〜ガトリング〜〜〜〜である。ア〜〜〜〜〜ンパンチでもある。

そう、お経を唱えるのは「必殺技名の叫び」に近いのだ。
「何を言ってるんだ」という声が、それこそお経のような重低音で聞こえてきそうだが、ちょっとお付き合いいただきたい。

お経は呪文ではない

永遠の謎だった。

なぜ悟空は「かめはめ波」を繰り出す際に「か〜〜〜め〜〜は〜〜〜め〜〜〜〜波〜〜」と叫ぶんだろう。
叫ばなくとも、悟空は掌底から青いエネルギーを放出できる。ルフィも腕を伸ばすことができる。アンパンマンだって殴れる。

すなわち、技名を叫んだからといって、何か特別な「効果」が発動するわけではない。
その点で、呪文とは対照的である。

なぜなら、呪文は音声認識で効果が発動するものだからだ。

例えば、顎がしゃくれてて、サ行がすべて「シャシィシュシェショ」としか発音できないパズーがいたとする。その場合、『天空の城ラピュタ』のクライマックスを想像するのはとてもじゃないができたもんじゃない。

「バルシュ」

だったら、シータもムスカもラピュタ城もポカーンである。

つまり、呪文の場合、効果を発動させるために正しく発音することが大事なのだ。

そういう意味で、お経は呪文とは決定的に違う。
お経を呪文だと思っている人からはよく「唱えたらどういう利益があるんですか?」と言われたり、「いや、唱えましたけど?」みたいな顔をされるけど、これは大きな間違いだ。

もちろん「陀羅尼だらに」といって、暗記した語句を繰り返し繰り返し唱えることで、雑念から離れることを目的とした呪文のようなお経もあるが、これは没頭にこそ意味があるのであり、決して魔法が発動するわけではない。

「我昔所造諸悪業 皆由無始貪瞋痴 従身語意之所生 一切我今皆懺悔」と唱えても、一切の罪が浄化されるわけではないし、般若心経を唱えたらこの世界が色即是空になる、なんてことも決してない。

お経を唱えたところで、何か効果がすぐさまに発動するわけではない。
お経はバルスではないのだ。

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稲田ズイキ

いなだ・ずいき●僧侶。1992年京都の月仲山称名寺生まれで現・副住職。同志社大学を卒業、同大学院法学研究科を中退、その後デジタルエージェンシー企業インフォバーンに入社。2018年に独立し、寺に定住せず煩悩タップリな企画をやる「煩悩クリエイター」として活動中。コラム連載など、文筆業のかたわら、お寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」や失恋浄化バー「失恋供養」、煩悩浄化トークイベント「煩悩ナイト」などリアルイベントを企画しています。フリースタイルな僧侶たちWeb編集長。Twitter @andymizuki
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竹内佐千子

たけうち・さちこ●漫画家。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。
自身の恋愛体験を描いたコミックエッセイをはじめ、おっかけ、腐女子、などをテーマにしたコミックエッセイを描き続け、最近はストーリー漫画も描いている。
赤ちゃん本部長』(講談社)、『生きるために必要だから、イケメンに会いに行った。』(ぶんか社)など。
ホームページhttp://takeuchisachiko.jp/
Twitter @takeuchisachiko

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