2020.9.14
いつかは欲しいフォルクスワーゲン・バス。今はティッシュボックスで我慢
1990年の春に放送され、“トレンディドラマの集大成”と呼ばれた作品があった。
浅野ゆう子、石田純一、鈴木保奈美、陣内孝則、菊池桃子、本木雅弘という出演者陣を見るだけでもうお腹いっぱいな『恋のパラダイス』である。
時代はバブル全盛期、舞台は鎌倉〜湘南、登場人物の職業は歯科医や商社マン、放送局はフジテレビ、主題歌は氷室京介……。
ここまで揃えてくれると満腹すぎて軽い吐き気を覚え、そこも通り越して清々しささえ感じる。
ドラマの中身は、いい年頃の男女がくっついたり離れたり恋の駆け引きをしたりする物語。
もちろん、細かく言えばもっと色々あるんだけど、当時のトレンディドラマなんて全部、“くっついたり離れたり恋の駆け引きしたりする話”とまとめられる。
大学に入ったばかりで頭の中がバラ色だった僕は、このドラマを熱心に観ていた。
バツイチの浅野ゆう子が見合いをした相手は、幼稚園の跡取り息子である、人のいい陣内孝則。
陣内はゆう子にゾッコンだが、ゆう子の方は別れた夫・石田純一や、妹・鈴木保奈美の彼氏であるモッくんとの間で心が揺れ……。
ああ、もう!
思い出しながら書いているだけで胸焼けしてくる! そして清々しい。
幼稚園で働いている陣内孝則の愛車は、園児の送迎用バスだ。
片思い中の浅野ゆう子を乗せて走るバスの中には、軽快なディズニーの音楽が流れていたりする。これではモテるわけがない。
そしてその幼稚園バスは、フォルクスワーゲンのタイプ2、いわゆるフォルクスワーゲン・バスだった。
リアルさよりも上っつらのおしゃれさを優先させる、バブル時代のこのセンス。
嫌いではない。
中古市場でもタマ数が少なく、良いものは値段がバカ高い
僕はフォルクスワーゲンというメーカーが好きで、かつてニュービートルからトゥーランへと2車種を乗り継いできた。
なぜフォルクスワーゲンに惹かれるのか、言葉ではなかなか説明しにくいんだけど、他のイケイケな外車に比べ、そこはかとないインテリジェンスを感じるからかもしれない。
金はないけど学はある欧米人の渋いおじいちゃんが、長年大事に乗ってきたフォルクスワーゲン・タイプ1(旧ビートル)、なんていうイメージになぜか萌えるのだ。
そして僕がビートルよりも心惹かれ、状況さえ許せばいつか乗ってみたいと長年憧れている旧車が、陣内も乗っていたフォルクスワーゲン・タイプ2、通称・バスなのである。
でも状況はなかなか許してくれない。
フォルクスワーゲン・タイプ2は1950年から製造がはじまり、T1、T2と世代が移っていく。
現行車はT5だが、T3以降はバンやミニバンの形になり、狭義でバスと呼ばれるのはT2まで。
しかしT2は、本国ドイツで1979年に製造が終了している。
つまり、中古のT2は最新のものでも40年以上前の車。
市場に出回っている個体はオンボロか、程度が良いものはバカ高い値段がつけられているのだ。
ブラジルではT2を「コンビ」という名前で呼び、本国での生産終了後も、2013年までつくり続けていた。
だから狙い目は、コンビのなるべく新しい年式なのだが、日本の中古市場ではタマ数が極端に少なく、なかなか巡り合わないし、あったとしてもやはりバカ高い。
そういうわけで、車の買い替えタイミングが来るたびにフォルクスワーゲン・バスを一応探してみては、「ああ、やっぱり無理だ」と諦めている。
先日雑貨屋さんで見つけた、バスのティッシュボックスなどを虚しく愛でているというわけです。