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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

キーボードは、この先ずっと愛用する万年筆のような感覚で選ぼう

12インチの小型MacBookを外部モニターにつなぎ、ブルートゥースキーボードで仕事をしている。
長年、アップル純正の外部キーボードである“ワイヤレスキーボード”を使っていたが、先日、とうとう壊れてしまった。
Enterキーが吹っ飛んだのだ。

実はもう何年も前からEnterキーの調子は悪く、はずれ気味だった。
文章を書いていて調子が出てくると、Enterを気持ちよく“ターン!”と叩くのでダメージを受けていたのだろう。
キーボードの各キーはもともと簡単にはずせるつくりになっているが、僕のEnterキーは、本体と接合するための大事な部品が破損していて、いよいよ嵌め込めなくなってしまった。

たった一個のキーとはいえ、数ある中でもっとも使用頻度の高いEnterキーだから、ここが使えなくなると致命的。
「長年の間、どうもありがとう」とお礼を言ってキスしたあと、燃えないゴミ袋に放り込んだ。

僕にとって一番使いやすいのはアップル製の薄型キーボード。一生これで決まり!

僕のように文章を書いて生活している人は、身軽な生き方なのかもしれない。
昔の人だったら原稿用紙と一本のペンさえあれば、いつでもどこでも仕事をはじめることができた。
その分、筆記具にこだわる人が多く、長年愛用している万年筆などを持っている人が多かったのだと思う。

昔の人の愛用万年筆にあたる現代の筆記具は、キーボードだという説がある。
手に馴染んだ快適なキーボードは執筆の助けになるから、こだわりを持って選ぶべき。
確かに、一理ある。
だって、パソコンやモニター、それにタブレット端末などは、時期が来たらどんどん新機種に買い替えていくが、基本性能という観点ではもうほとんど進歩の余地がないキーボードは、気に入ったものをずっとキープして愛用するものだから。

では次のキーボードはこれから10年も20年も使える機種を、と考えて選ぶことにした。
少しくらい高くてもいいじゃないか。ここでケチケチするのはよくない。
だからガジェット好きの間で最近とても評判のいい、HHBK(国内メーカーの株式会社PFUが製造販売する高級キーボード。正式名称は「ハッピーハッキングキーボード」)をまず検討した。
だけど様々なサイトでレビューを見るうち、自分には向いていないことに気づいた。
キーストローク(キーを押した時に沈む幅)が深すぎるのだ。

MacBookのキーボードや“ワイヤレスキーボード”は、キーストロークが浅いのが特徴。
そして僕は長年、このストロークの浅いキーボードに慣れ親しんでいるので、いきなりキーの深いHHBKにしたら違和感を抱くに違いないと思ったのだ。

あまり面白味はないが、やっぱり慣れたアップル系キーボードにしよう! そう決めて、“ワイヤレスキーボード”の後継機種である“マジックキーボード2”を購入した。
単三電池で駆動する“ワイヤレスキーボード”から進化し、“マジックキーボード2”はUSB充電式で、本体自体がとても薄くなっている。
それ以外は、キーピッチからキーストロークまで、すべて“ワイヤレスキーボード”と同規格なので、届いたその日からまったく違和感なく、まるで自分の手足のように使いこなすことができた。

「筆記具としてのキーボード」というのは、きっとこういうことなのだろう。
僕は多分、一生アップル系の薄型キーボードを愛用するのだ。
もう浮気しようとは考えていない。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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