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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

20年近く前に買った高級フレームで実感。やっぱり高い眼鏡は正義!

ど近眼なうえにコンタクトレンズが嫌いなワタクシはメガネ愛用者
エルヴィス・コステロやウィーザーのリヴァース・クオモといった、バディ・ホリーの系譜を継ぐメガネロックミュージシャンが好きで尊敬しているということもあり、誇りを持ってメガネスタイルを貫いている。

以前は取っ替え引っ替えいろんな形のメガネを使っていたのだが、やがて自分に似合うのは、黒縁のウェリントンタイプしかないということに気づいた。
いや、バディ・ホリーもエルヴィス・コステロもリヴァース・クオモも黒縁ウェリントンだから、強引に自分を合わせていったのかもしれない。

そんなメガネ好きな僕だが、実は四年ほど前に「もう当分の間、メガネは安いブランドのものしか使わん!」と決めた。
なぜなら、超イタズラ好きのワンコを飼いはじめたから。
このワンコ、子犬の頃から人間の匂いのするものを集めたりかじったりするのが趣味。
スリッパなんかはいいんだけど、大事にしている靴とともにメガネやサングラスを立て続けに数本かじられたときは、ほとほと参ってしまった。

そんなに大事なメガネはちゃんとケースにしまえと言われるかもしれないけど、我が家のワンコちゃんときたら、わざわざメガネケースから取り出してかじるのだからどうしようもない。
だから、やられても心理的および経済的ダメージが小さい、ジンズやゾフのメガネばかりを使うようになったのだ。

泰八郎謹製×ナンバーナインのレアモデルに、現時点で最高のレンズを入れてみた

でもそんな馬鹿だけど可愛い我が家のワンコももうすぐ5歳。
おかげさまでだいぶ落ち着いてきて、無闇に人のものをかじることもなくなってきた。
「もう! このおバカ犬!」と怒りつつ、そんなところもまた可愛いなあと思っていたので、分別のついてきたことに一抹の寂しさを感じたりもするのだが、まあ、犬も人間の子供もそんなものだろう。

じゃあ、久しぶりにいいメガネをかけますか!
そう思って、しばらくの間ワンコの手が届かないところで秘蔵していたフレームを取り出した。
これもおバカ犬にかじられてレンズに傷がつき、お蔵入りしていたものだけど、奇跡的にフレームはほぼ無傷だったので、いつかレンズを替えてまた使おうと思っていたのだ。

金子眼鏡のブランド「泰八郎謹製」の純セルロイド製メガネだ。
昭和17年に福井県鯖江市で生まれた山本泰八郎は、中学卒業後、セルロイド職人に弟子入りし、伝統的なセルロイドフレームのメガネ製作をはじめる。
泰八郎の作品は美しく、多くのメガネ通を唸らせてきた。
そんな泰八郎は55歳のときに金子眼鏡と知り合い、「泰八郎謹製」というブランドになった。

とまあ、そんなヒストリーを持つ泰八郎謹製は、数多くのブランドとコラボレーションモデルをつくってきたことでも有名。
僕のモデルは確か2000年代前半に買ったものだったが、現在はソロイストのデザイナーとして活躍する宮下貴裕氏が在籍し、人気最高潮だった頃のナンバーナインとのコラボモデルだ。
ビート時代の偉大な詩人、アレン・ギンズバーグをイメージソースとしてデザインされたものである。

その後の数年間、同モデルはつくられ続けたが、僕の持っているのは最初期型。
二期目以降はフレームの淵にある金属飾りがハート型やスカル型になり、ナンバーナイン色は強まるのだが、一般的にはやや使いにくいものになるので、リリース直後にこの型を買った自分の選球眼を、今さらながら褒めてやりたい。
結構なレアモデルになっているようで、レンズ交換とフレーム調整のために金子眼鏡に持ちこんだ際には、店員さんにめちゃくちゃ羨ましがられた。

当分はこの眼鏡を使っていこうと思うので、かなりいいレンズを入れた。
遠近両用で両サイド非球面の最薄型。しかもPC対応のブルーライトカット機能もつけちゃったので、レンズだけで4万円。
レンズ込み込みで1万円前後の眼鏡ばかりかけていたここ数年間から思うと、えらい進歩だ。

久しぶりに高級フレームのメガネをかけてみて、つくづく思った。
やっぱりいいメガネをかけていると気分がぐんと上がるのだ。
何しろメガネは、身につけているものの中で最初に人の目に触れるのだからね。

もちろんジンズやゾフが悪いというわけじゃない。
それは、今さら「ユニクロの服ってどうなの?」と言うのと同じで、品質やスタイル的に高級ブランドとなんら遜色はないし、コスパの面からいえば使わない手はないのだ。
だから、わざわざ高価なメガネをかけるのは、マニアックな趣味の領域と言ってもいいのだろう。

とかなんとかブツクサ言ってるけど、本当に泰八郎さんのおかげで、気分上々であることは間違いない。
だから頼むぜワンコちゃん。
赤ちゃん返りして、気まぐれでかじったりしないでくれよな、本当に。

photo by carlo magnani, Brennan Schnell/flickr
photo by carlo magnani, Brennan Schnell/flickr

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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