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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

DJパパ/1980〜90年代に青春時代を送ったサブカルお父さんの選曲

コロナによる外出自粛期間中、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオなどのサブスクが大繁盛となったようだが、我が家もご多分にもれずお世話になった。

うちの小6娘はプライムオリジナルの米ドラマ「まほうのレシピ」(原題「JUST ADD MAGIC」)の大ファン。
ざっくり説明すると、主人公である三人のローティーン少女が見つけた古いレシピ本がキーアイテムで、そこに書かれている通りに料理をつくって食べると、いろいろな魔法が使えるというファンタジックな内容。
全体的に、なかなかよくできたドラマだ。
歳が近い主人公たちの活躍に感じるところが多々あるらしく、娘は全シーズン・全エピソードを何度も繰り返し観ている。

昨年配信されたシーズン3の中に、「パーティー台無しホイップ」という回がある。主人公の一人・ケリーのサプライズ誕生日パーティーの話だ。
そのパーティーでDJを任され、レコードをかけているのはケリーのパパ。
「さあ踊りなよ。カモーン!!」と子供たちを煽るのだが、なぜか誰も乗ってこない。
ある少年が近づくとパパは「やあ何がいい? ティアーズ・フォー・フィアーズ? デュラン・デュラン?」と聞く。
少年は苦笑しつつ「おじさん、気を悪くしないでほしいんだけど、今世紀の曲はないの?」。するとDJパパは眉根に皺を寄せ、「気を悪くしないでほしいが、今世紀に名曲はない」と断言する。

娘と一緒にこのシーンを観ていて、(ああ、これは俺のことだ)と気持ちがムズムズした。
やっぱりアメリカにもいるんだな〜。DJパパは同世代に違いない。
「今世紀に名曲はない」か。
まったくその通りだぜ……。

車の中では小学生の娘と選曲権の奪い合いに

いや、一端の音楽好きとして、そんなことじゃいかんと思っている僕は、新しい曲も積極的に聴くようにはしているのだ。
そして、「いいね」と思うアーティストもいっぱいいる。でも所詮「いいね」止まり。
10代〜20代の頃に聴いた曲のような、我が身に染み入る感覚はもはや味わえない。
これはひとえに、感性の衰えによるものだということは否定できない。
でも最近は、もうそれでいいと開き直ってもいる。

車の中ではいつも助手席に座る娘と選曲権の奪い合いになる。
大抵は、「運転しているのはパパだから、パパに権利があるのだ!」と押し切り、僕の好きな曲ばかりをかけるが、その間、娘は死んだ魚の目をしているので、ある程度のところで譲ってあげる。
すると、アナ雪やミニオンズのサウンドトラックとか、あいみょんとかTWICEとかばかりで、今度はこちらが死んだ魚の目になってくる。

パパの曲でもたまに娘にヒットするものがあって、ブルーハーツとかエレカシとかスピッツとかオザケンとか戸川純の曲が、彼女専用のプレイリストにポツポツと混入している。
ただしそれは稀なことで、先日はついに娘から「パパの好きな曲は、だいたいみんな同じに聞こえる」と言われてしまった。
DJパパは悲しい。
まあね〜。僕も子供の頃、親が聞いている演歌や歌謡曲は大嫌いだったけど、まさかそんな風に聞こえてるわけじゃないだろうな。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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