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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

おしゃれなワーク系セットアップだけど、ナッパ服風だから好きなのだ

アナーキーをご存知だろうか?
1978年に結成、1980年にレコードデビューした、ジャパニーズパンクの草分け的なバンドである。

なんやかんやあってTHE ROCK BANDと変名したり、活動休止していた時期もあったり。
また主要メンバーのお一人が亡くなってしまったりもしたけど、現在もほぼオリジナルメンバーで精力的な活動を続けている重鎮だ。
活動初期からアナーキー・ANARCHYとともに、亜無亜危異という漢字表記があり、現在はこちらの方がメインとなっている。

一口にパンクと言っても、インテリ系、アート系、左翼系からスポーツ系、右翼系、不良系まで実はさまざまあり、僕はそのどれも愛しているんだけど、アナーキーは“ド不良系パンク”の元祖だ。

活動を開始した1970年代末は、日本にまだ本場のパンクカルチャーがしっかり伝わりきっていなかった時期。
そしていかにも悪そうなアナーキーが演奏する過激な音楽に反応して固定ファンになったのは、当時の日本で一大勢力を誇っていた暴走族系の不良だった。
亜無亜危異という当て字からもそんな雰囲気は伝わるだろう。

いまもアナーキーのライブは、ほかのパンクバンドのライブとは趣の異なる、それこそ暴走族の集会のようなピリついた空気が漂う。
そこがまたいいのだ。

ディテールはいろいろ違うけど濃紺のワーク系セットアップ=ナッパ服と自己満足

デビューからすでに40年以上経過しているバンドだから、もちろん紆余曲折あるけど、アナーキーのファッションで有名なのがナッパ服。

ナッパ服というのは、旧国鉄の機関士や運転士が使用していた上下揃いの作業着のことだ。
アナーキーはデビュー当時から、国鉄払い下げのナッパ服をメンバー全員が着込むスタイルでキメていた。

現在もナッパ服はアナーキーの象徴。
腕に「国労」よろしく「亜無亜危異」と刺繍された赤い腕章をするのもお決まりだ。
コアなファン向けにアナーキーオリジナルのナッパ服も販売されていて、そちらは背面にバンドロゴが刺繍されている。
暴走族の特攻服のような雰囲気だ。

さて、長々とアナーキーおよびナッパ服について書いてきたのは、先日、アーバンリサーチに立ち寄ったら、ナッパ服風のセットアップを見つけてしまったからだ。
本来のナッパ服は詰襟が特徴だが、こちらは襟付き。
それにディテールはいろいろ違うけど、濃紺のワーク系セットアップというだけで、見た瞬間、「あ、ナッパ服! アナーキー!」と盛り上がり、即買いしてしまった。

アナーキーは大好きだけど、本物の旧国鉄作業着やアナーキーオリジナルナッパ服を買うほどの入れ込み系ではない。
なんとなくそのエッセンスをほのかに感じ、「ふふふ」とごく密かに満足したい程度のファンなのだ。

でも、素肌に直接羽織って赤い腕章でもしたらやっぱりかっこいいかな。
と、密かに目論んだりしている。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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