2019.11.28
行けば行くほどカスタマイズされる絶品中華の虜に! 〜新富町 湯浅
「料理の土台であるスープがきちんととれていれば塩ひとつまみだけでおいしい。調味料を重ねれば重ねるほど料理が重くなり素材の味が消えていく、というのが小林さんの哲学で、それまで教わってきた中国料理=“油”とか“調味料”という考えはそこで覆りました」と湯浅さん。
そうなのです。
この「上湯金翅」は黒餅米のお団子の上に梅山豚の生ハムがのったメジロザメのフカヒレスープなのですが、上湯スープはじんわりとカラダに沁み入るし、香りが良い黒餅米のお団子が生ハムの溶けた脂とものすごく合っていて、これはもう超絶品で超高級なお粥です。
きました!
私史上NO.1のクリスピーポーク。
お肉はしっとり、皮が信じられないほどサックサク、だけどカサカサじゃない! もうサイコーです。ボイルする、味を入れる、干す、高温で焼くという調理法で、訊くとものすごく時間と手間がかかっている。塩加減と乾かし加減がポイントだそうです。
こんなお料理を出されるとつい前のめりでいろいろ訊きたくなってしまうのが、フードライターの哀しいサガ。どうして、ここまで油を感じさせないのでしょうか?
「そもそもなぜ油通しをするのかというのは中国の水の文化にあります。今、自分がいるこの環境で、使っている食材でおいしくするためにはどうしたらいいかを考えて調理法を決めると、必ずしも油通しが必要ない料理が出てくるのです。若い頃は教わることを鵜呑みにして、なぜそうするのか疑問に思わなかった。でも小林さんと出逢ってから本を読むようになり、よく神保町の古本屋さんに連れて行ってもらいました。レシピ本ではなく中国の文化や熱の科学の本ですけど」
「熱ってとっても重要で例えば炒飯は卵入れて白飯入れたら10秒くらい振らないです。若い頃はかっこいいと思って鍋をやたら振っちゃうんですよ(笑)。でも振れば熱は逃げてしまう。炒飯は温度が下がると仕上がりが全然違います。炒飯は米料理ではなく卵料理です。卵に火が入りすぎると油を吐き出すので、油っぽくパサパサに仕上がってしまいます。パラパラとパサパサはまったく違いますよ」
「炒飯って炒め物の基本なので修業時代の最初に作らされるのですが、最後まで悩む料理ですね。一人前と三人前では加減が変わるし、入れる材料の分量も難しい。良かれと思って貝柱を入れすぎると焦げ付いたりして……、バランスって大事なんだな、とか。焼飯と炒飯は似て非なるもので、これがパサパサとパラパラの境界線だと思います」と。
こんな話を訊いたら炒飯が食べたくなってしまうではないか!
でも残念ながら本日のコースには出ないので、次回は噂の「毛蟹丸ごと一匹炒飯」をぜひいただきたい!