2024.8.23
株価と地震と太陽フレア。一見関係なさそうな事象の裏に潜む共通のメカニズムとは?
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
今回は、一見何の関係性もなさそうな人間の経済活動と、地球、そして宇宙の活動に潜む不思議な共通点について。なんとなく知っていたような、けれど改めて考えると不思議な現象を解説します。
第20回「株価と地震と太陽フレア」のはなし
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太陽フレアと地震の頻度に潜む、共通の法則とは?
「宇宙っていいな」と思うタイミングはどんな時ですか? Podcastに寄せられるコメントを見ていると、「宇宙の壮大さに比べると、自分がちっぽけに感じて気持ちが楽になる」「大きな宇宙に吸い込まれる不思議な気持ちになれていい」というものが多い印象です。
これを読んでいるあなたもそうなのかもしれないですね。
私は「壮大で歴史が深く謎だらけなのに、身近なこんなことと繋がってるのか!」と実感できる時に一番「宇宙っていいな」と思えたりします。
ということで今回は、私が感じる宇宙のおもしろいポイントの一つである「太陽フレアと地球上の身近な現象に共通する不思議な法則」を紹介していきます。
太陽フレアと、地震、株価変動に共通して見られる法則性は、必読です。
5月に日本各地でオーロラが観測されたことは記憶に新しいですが、オーロラ発生の原因が太陽フレアだということは、ニュースなどでも繰り返し報道されていた印象です。この連載でも何度か紹介してきました。
あの大規模なオーロラを発生させたフレアは、やっぱり大きな爆発でした。一般的にあのような規模のオーロラは頻繁には見られない、珍しい現象です。また、太陽フレアも大規模なものはなかなか発生しません。
逆に小規模の太陽フレアは比較的頻繁に発生していることが確認されています。このように、規模とその頻度にはある関係性があります。
この関係性を紐解いた結果、太陽フレアはその爆発のエネルギーが10倍になると、その頻度が1/10になるということが明らかになりました。
この関係性から、これまでに観測された最大規模の太陽フレアは、大体10年に1回発生する計算になります。
実際太陽は、11年の周期で活発な時期とそうでない時期を繰り返していて、活発な周期のうちに一番大きなフレアを発生しやすいので、10年に1回の巨大な爆発が起こる、という確率には説得力がありますね。
連載でも紹介したように、今は太陽の活動性が11年の中で最も高い時期に近く、10年に1度規模の巨大爆発が発生しやすいタイミングだと考えると、危険性の高い時期だと言えます。
さらに興味深いポイントはここからです。この発生頻度と規模の関係性、実は地上で発生する地震も同じことが言えるんです。
地震では、マグニチュードが1大きくなると、発生確率が1/10になることがわかっています。これは日本だけでなく、地震が見られるどの地域で同じ傾向になると言われています。
規模が大きい現象ほど発生頻度が低くなるというような、規模と発生頻度の間に成り立つ関係性を「べき乗則」といいます。
私たちは経験上、この関係性を肌感覚としてなんとなく認識しているかもしれませんが、地球全体に影響を与えうる太陽フレアと、各地域で発生する地震という、関係性がない2つの事象の間にも共通の法則性があるというのは、改めて考えると不思議です。
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