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日本初の月面着陸を目指す! 「SLIM」が宇宙開発の未来を変える!?

SLIMは新たな着陸テクノロジーの検証だけでなく、「月はどうやって出来たのか?」という科学研究の視点での成果も狙っています。

月の起源は、地球に巨大な天体が衝突して剥ぎ取られた物質によって作られたという「ジャイアントインパクト説」が有力と言われています。この説を現地で検証するのがSLIMのもう一つの目的です。

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もしジャイアントインパクトで月が作られたとすると、月の物質は地球のものと似ていることが考えられます。そのためSLIMはその性質がよりよく観察できる、月の地下のマントルを調査しようとしているのです。

マントル部分は、通常月の内部に隠れているため、表面を掘るか、何かしらの影響で地表に露出している部分を狙う必要があります。今回のターゲットは後者。露出部分としてSLIMが着陸を狙うのが、月の表面にあるクレーターの「斜面」です。

その斜面には、カンラン岩と呼ばれる月のマントルの物質が露出していることが確認されています。カンラン石は、地球から剥ぎ取られたばかりの時期に、月内部に沈んでしまった物質です。この岩石の科学的な性質を地球のものと比較することで、月の形成と進化の謎にアプローチできると考えられています。

実は、月のクレーターにカンラン岩が露出しているという発見は、連載第1回の月面の水探査の中でも紹介した日本の月観測衛星「かぐや」が見つけた成果。

2007年12月に本格始動した「かぐや」は、今は世界で受け入れられている月の水の存在を確認することは叶いませんでした。この結果だけを見るとかぐやのミッションが失敗したように思えるかもしれません。しかしそうではありません。
実は「かぐや」の主な目的は、月表面の元素や岩石の分布の把握でした。つまり、今回のSLIMの科学ミッションは、JAXAが約16年の時をかけて研究のバトンを繋いできた結果、検証できる新しい可能性でもあるのです。

科学研究はこのような成果の積み重ねの上に成り立っていることが実感できる、非常に素晴らしい流れだと私は思っています。そしてそこから、新しい未来を切り開いていくことができます。

大きな盛り上がりを見せる月面探査。2040年には宇宙飛行士を中心とした1,000人程度が滞在可能な拠点の整備まで見込まれています。
そのためには自由な月への往来手段が重要であり、まずは往路の確立が望まれているのです。

また、宇宙開発先進国と言われてきた日本は現在までに月面着陸を成功させることができておらず、アメリカ、中国、ロシア、インドに遅れをとっている状況。このミッションの結果によって、世界での日本のポジションが大きく変わることも考えられます。だからこそ1月20日の着陸計画は、なんとしても成功してほしいですね。

この記事のお供はこのお酒!

 神奈川県茅ヶ崎市のブルワリーPassific Brewing(@passificbrewing)のエーデルピルス。飲みやすさを感じたのは、私たち日本人が馴染みが深いジャーマンピルスナーだからかもしれない。個人的に好きなブルワリーで、名前が単純なPacificではなくPassificになっていることにも注目を。これはPass = 峠とPacfic(太平洋)の造語とのこと。月を見上げた時に黒く見える場所を「海」と呼んだり、峠ともとれる斜面を攻めるSLIMの姿がこのネーミングにリンクしたのでピックアップしました。専門店のオンラインでも買える他、取り扱い店舗はこちらのリンクに。

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 次回連載第6回は1月26日(金)公開予定です。

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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