2023.12.22
イーロン・マスク率いるSpaceXが展開するサービス「Starlink」をどこよりもわかりやすく解説
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宇宙開発が盛り上がる一方で、Starlinkの大規模な衛星群に危機感を感じることがあります。
それが宇宙ゴミ問題です。宇宙開発のベクトルは月や火星に向かっており、特に月に関しては人々が生活をし、社会を形成することを見越した研究が日々行われています。
人類の可能性を拡げる宇宙への探求が待っている中で、最大42,000機のStarlink衛星が全て故障し、衛星軌道上にゴミとして残り続けるとどうなるのでしょうか? なんと衛星のゴミが地球を覆う薄い膜のようになり、人間が地球から出られなくなってしまうことになりかねないのです。
広い宇宙の中で数万機の人工衛星がゴミになっても、問題にならないのでは?と思う方もいるかと思います。けれど恐ろしいのは、ゴミが連鎖的に増加していく「ケスラーシンドローム」です。衛星同士が衝突し、その結果生じた破片が新たな衛星との衝突を引き起こし、ますます多くの破片を生み出す悪循環を引き起こす現象を、提唱者の名前から取ってこう呼びます。
1個のゴミが他の衛星にぶつかり100個のゴミを作り、その100個それぞれが100個のゴミを作るとその数は1回の連鎖で10,000個を超えます。ケスラーシンドロームは、宇宙活動に与える重大な脅威の一つあり、その回避には宇宙ごみの管理や軌道投入の工夫が必要です。
私が専門としているX線天文領域でも宇宙ゴミ対策は行われています。2023年9月に打ち上げられた「XRISM」衛星では、デブリ(宇宙ごみ)の衝突回避システムが搭載されているだけでなく、デブリ衝突に対する耐性の検証などもおこなわれています。
また、過去に打ち上げられた「すざく」衛星は2015年に運用を終了する際に、今後この衛星がスペースデブリとならないために、使用後の衛星が安全な状態なのか、永遠に宇宙を彷徨わないよう地球の大気圏に落ちるように軌道が制御されているか、といった対策が重ねられていました。このように、天文学では大きなサイエンスの解明だけでなく、宇宙環境の保全も配慮されるようになっています。
Starlinkだけがスペースデブリ問題を引き起こしているわけではありません。しかしその数は無視できるものではないです。加えて、宇宙活用が活発になっている現代では様々なプロジェクトによる衛星の数も桁違いに増えており、常に考えなければならない問題に発展しています。
SpaceXが取り組む、「世界からインターネット格差を無くす」ことを目的としたStarlink。その大きなビジョンと世界へのインパクトに期待が集まる中でさまざまな懸念も指摘されています。利権問題に踏み込むつもりはないので、今回は私の専門でもある天文学的視点から整理しました。これからの宇宙利用は、環境保全と社会インパクトの両面で注目するといいかもしれません。
アメリカ カリフォルニア州のブルワリー「カサ アグリア スペシャリティ エールズ(Casa Agria Specialty Ales)」の「ネクターノート(Nectarnaut)」。イーロン・マスクの行動力には負けるかもしれませんが、パッケージを見た瞬間全力ジャケ買い!(笑) 全面宇宙のデザインに惹かれて飲んでみると、ホップの香りが強く、個人的に好みなHazy Pale Aleでした。パッケージデザインはそのコンセプトを表現するものだし、フレーバーとリンクする部分もあるはずなので、ジャケ買いは相性のいいお酒を見つける最善策かもしれませんね。日本では専門店のサイトなどで購入できます。
次回連載第5回は1月12日(金)公開予定です。お楽しみに!
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