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1998年の田臥勇太と能代工バスケットボール部が達成した3年連続3冠「9冠」の熱狂!【田口元義『9冠無敗』一部試し読み】

本日12月15日に田口元義の新刊『9冠無敗 能代工バスケットボール部 熱狂と憂鬱と』が刊行されました。

のちに日本人初のNBAプレーヤーとなる絶対的エース・田臥勇太(現・宇都宮ブレックス)を擁し、前人未到となる3年連続3冠=「9冠」を達成した1996~1998年の能代工業(現・能代科技)バスケットボール部。東京体育館を超満員にし、社会的な現象となったあの「9冠」から今年12月のウインターカップで25年。秋田県北部にある「バスケの街」の高校生が巻き起こした奇跡の理由と、25年後の今に迫る感動のスポーツ・ノンフィクションです。
今回は本書の刊行を記念して、『9冠無敗』の序章を試し読みいただきます。

(構成/よみタイ編集部) 

25年前に、田臥勇太を中心とした能代工バスケ部がもたらした熱狂

 JR千駄ケ谷駅の改札を抜けると、眼前には東京体育館が悠然と佇んでいる。いつもなら横断歩道で信号待ちをしたところで5分とかからず到着できるはずが、日を追うごとに入口までの歩幅が狭くなってくる。それどころか、立ち止まってしまうほどの歩調にまでなってしまう。
 1998年、年末。
「ウインターカップ」と呼ばれる全国高等学校選抜優勝大会(現:全国高等学校バスケットボール選手権大会)を観戦に訪れた者たちの興味は、ほぼ一点に注がれていた。
 秋田県立能代工業高等学校。
 全国大会で49回もの優勝を誇る高校バスケットボール界の盟主は、前人未到の偉業を果たそうとしていた。
 能代工は96年から97年まで、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)、国体(国民体育大会)、ウインターカップの3大大会を全て制しており、98年もすでに2冠を獲得していた。つまり、集大成となるこの大会で優勝すれば、「3年連続3冠」の達成となる。
 常勝チームを牽引するのは、キャプテンでエースの田臥勇太、スリーポイントシューターの菊地勇樹、守備の要の若月徹である。1年時から主力としてコートに立つこの3人のなかでもとりわけ脚光を浴びていたのが田臥だった。
 身長173センチ。バスケットボールにおいては小柄に分類される田臥のプレーには、一度目にしたら夢中になってしまうほどの引力があった。
 ボールが手のひらに吸い付いているような錯覚に陥るほどのハンドリング。トップスピードで相手を置き去りにする閃光の如き速さのドリブル。相手をあざ笑うかのようなノールックパスに大柄な選手をも翻弄する繊細なタッチのシュート……その全てがしなやかに、流れるように展開され、何より華麗であった。そんなプレーに人々は嘆息を漏らし、虜になる。敵味方関係なく観たくなる選手。それが、田臥だった。

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田口元義

たぐち・げんき●1977年、福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。雑誌編集者を経て2003年からフリーライターとして活動する。
著書に「負けてみろ。聖光学院と斎藤智也の高校野球」(秀和システム)などがある。

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