2021.4.11
新型コロナの流行は生態系からの警告! ヒト由来の風邪で死亡したボノボが教えてくれること
人間、動物、生態系の健康はひとつ
人間がカエルツボカビに接触しても、健康に害はありません。ボノボにとっておそらく致死的であろう風邪も、人間にとってはただの風邪です。
だからといって、放っておいてよいのでしょうか?
カエルやボノボ、他の生き物たちが地球からいなくなっても問題ないのでしょうか?
決してそんなことはありません。
近年、「ワンヘルス」という概念が広がりつつありますが、「人」「動物」「生態系」の健康はひとつです。
カエルが絶滅すれば、生態系のバランスがくずれます。そしてそれは、人間にとってもすみにくい地球になり得ることを意味します。
新型コロナウイルスはじめヒトの新しい感染症がどんどん現れているのは、生態系バランスがくずれたからだとも言えるのです。
かつて、私の上司だった宇宙飛行士の毛利衛氏は、「地球はひとつしかない。地球外に住むことよりも、このひとつしかない地球でサステナブルに暮らすことを科学コミュニケーションしないと」と言いました。
その通りだと思います。地球はさまざまな生き物が織りなす生態系というシステムに支えられています。
新型コロナウイルスによって、ワンヘルスの重要性を直感的に感じられるいまこそ、このシステム維持を真剣に考え直すときではないでしょうか。
●主な参考文献
江口絵里(2008年)「ボノボ ―地球上で、一番ヒトに近いサル―」そうえん社
岩槻邦男・馬渡峻輔 監修、杉山純多 編集(2005年)「バイオディバーシティ・シリーズ4 菌類・細菌・ウイルスの多様性と系統」裳華房
Kim S. Grützmacher, et.al. Human Respiratory Syncytial Virus and Streptococcus pneumoniae Infection in Wild Bonobos. EcoHealth 15, 462–466, 2018.