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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

『鬼滅の刃』「蛇の呼吸」の真実を生物専門家が解説。最強の呼吸法を持つ動物は!?

シュノーケルのような気管で気道確保

でも、いくら嚢状肺がポンプのような役割を果たすといっても、巨大な獲物を飲み込んだら喉がふさがってしまって、そもそも空気が出入りできないのでは? と思いますよね。

実は、喉がふさがっていても問題がないのです。

ヘビの気管の先端は、喉ではなく、口内中央くらいに開いていて、気道が確保できるようになっているからです。

言ってみれば、彼らの気道入口は、「シュノーケル」のようなイメージ。

このように、気道入口の形状、嚢状肺の働きによって、多くのヘビは呼吸をしながら、ゆっくりと時間をかけて、信じられないくらい大きな獲物を呑み込んでゆくのです。

気管の先端部が口内で開口している(赤矢印)。 右図の青い部分が右肺。赤が心臓、緑は左肺。ウミヘビの左肺は退化してしまっている。(イラスト/大渕希郷)
気管の先端部が口内で開口している(赤矢印)。 右図の青い部分が右肺。赤が心臓、緑は左肺。ウミヘビの左肺は退化してしまっている。(イラスト/大渕希郷)

とぐろを巻いているのはリラックス、休息中

ところで、『鬼滅の刃』の「蛇の呼吸」には、「塒締とぐろじめ」という型があります。
作品の公式ガイドブックによると、「まるで大蛇が捕食する獲物を締め付けるかのごとく、攻撃を仕掛ける技。あらゆる角度から相手を切りつけてゆく」というものです。

確かに、多くのヘビは獲物に巻き付きます。大型のヘビの場合、獲物は大型の哺乳類などです。
このとき、相手の呼吸を見極め、獲物が息を吐くたびに胸部を中心に締め付けていきます。
つまり、巻き付かれた方は、息は吐けても吸えなくなります。
これによって獲物は窒息死します。

私が観察してきた経験をふまえると、獲物のサイズによっては、ものすごい力で絞められたことにより、血液循環が滞ったり、内臓等にダメージがいったりする場合もあるようです。
死んだネズミを与えたときに、破裂したこともありました。

仕事で訪れたバンコクのスネークファームにてビルマニシキヘビ(アルビノ)と。締め付けられてはいません。(画像提供/大渕希郷)
仕事で訪れたバンコクのスネークファームにてビルマニシキヘビ(アルビノ)と。締め付けられてはいません。(画像提供/大渕希郷)

しかしながら、ヘビが「とぐろを巻く」ことと「獲物を締め付ける」ことは、全く別の行動です。
ヘビがとぐろを巻くのは、例外もありますが、たいていリラックスしているとき、休んでいるとき

だから、私が初めて「塒締とぐろじめ」という型名を目にしたときは、回復系の技なのかな? と思ったくらいです。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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