2021.2.28
『鬼滅の刃』「蛇の呼吸」の真実を生物専門家が解説。最強の呼吸法を持つ動物は!?
シュノーケルのような気管で気道確保
でも、いくら嚢状肺がポンプのような役割を果たすといっても、巨大な獲物を飲み込んだら喉がふさがってしまって、そもそも空気が出入りできないのでは? と思いますよね。
実は、喉がふさがっていても問題がないのです。
ヘビの気管の先端は、喉ではなく、口内中央くらいに開いていて、気道が確保できるようになっているからです。
言ってみれば、彼らの気道入口は、「シュノーケル」のようなイメージ。
このように、気道入口の形状、嚢状肺の働きによって、多くのヘビは呼吸をしながら、ゆっくりと時間をかけて、信じられないくらい大きな獲物を呑み込んでゆくのです。
とぐろを巻いているのはリラックス、休息中
ところで、『鬼滅の刃』の「蛇の呼吸」には、「塒締め」という型があります。
作品の公式ガイドブックによると、「まるで大蛇が捕食する獲物を締め付けるかのごとく、攻撃を仕掛ける技。あらゆる角度から相手を切りつけてゆく」というものです。
確かに、多くのヘビは獲物に巻き付きます。大型のヘビの場合、獲物は大型の哺乳類などです。
このとき、相手の呼吸を見極め、獲物が息を吐くたびに胸部を中心に締め付けていきます。
つまり、巻き付かれた方は、息は吐けても吸えなくなります。
これによって獲物は窒息死します。
私が観察してきた経験をふまえると、獲物のサイズによっては、ものすごい力で絞められたことにより、血液循環が滞ったり、内臓等にダメージがいったりする場合もあるようです。
死んだネズミを与えたときに、破裂したこともありました。
しかしながら、ヘビが「とぐろを巻く」ことと「獲物を締め付ける」ことは、全く別の行動です。
ヘビがとぐろを巻くのは、例外もありますが、たいていリラックスしているとき、休んでいるとき。
だから、私が初めて「塒締め」という型名を目にしたときは、回復系の技なのかな? と思ったくらいです。