2020.12.20
「赤鼻のトナカイ」の科学的真実! サンタのソリをひくトナカイは「メス」なんです
赤鼻の正体は、毛細血管の充血
言うまでもなく、実際のトナカイは“フォグランプ鼻”を搭載していません。
ただし、トナカイは鼻粘膜の毛細血管の密度が高いため、血管が充血したとき、鼻が赤く見えることはあるようです。
クリスマスソングの歌詞にあるようにピカピカに光るほど赤くはないですが……。
人間でも寒いと鼻が赤くなることがありますよね。あれと同じです。
人間もトナカイも鼻のまわりには毛細血管(鼻粘膜血管)がたくさんあるのですが、トナカイは、なんと人間よりも25%もその血管密度が高いことがわかっています。
トナカイの生息地はとても寒いため、吸気のたびにその寒い空気を吸い込んで、脳まで冷えてしまいます。
多少冷える程度なら問題ないのですが、冷えすぎると脳にダメージがかかる場合があり、肺や気管にも負担がかかる場合があります。
そこで、鼻まわりの血管を拡張させて空気を温めてから吸うわけです。
これによって鼻が赤やピンクに見えることがあります(もちろん、病気やケガで赤くなることもあるのでご留意ください)。
一方で、逆に運動をしたことで体温が上がりすぎてしまうことによる脳の過熱も防ぐことができると思われます。
要するに、鼻を介して空気を温めるということは、鼻の血管の熱は奪われることになり、ラジエーターのような機能を果たしているわけです。
もし物語のように、トナカイがあの体重の生物(サンタさん)を乗せて、空気が薄く寒い上空を飛ぶのとしたら、ラジエーターである鼻の役割はとても重要でしょう。
寒い上空の空気を温めてから吸ったり、あるいはオーバーワークで上昇しすぎた脳の温度を冷やしたりするのに必要だからです。
さすがに歌のように、光るほど、つまり鉄を打つときのような発熱発光するほどの温度ではないにしろ、鼻も真っ赤になり得るかと思います。
私の元勤務先である上野動物園にトナカイはいませんでしたが、上野動物園と経営母体を同じくする多摩動物公園ではトナカイが飼育されています。
他にも日本各地にトナカイを展示している動物園がありますので、機会があればぜひ実物を見て、実際の鼻はどうなっているのか、じっくり観察していただけたらと思います。
●主な参考文献
“Robert May Tells how Rudolf, The Red Nosed Reindeer Came into Being”. The Gettysburg Times. (1975年12月22日)
Can Ince. et.al.“Why Rudolph’s nose is red: observational study” BMJ 2012 Dec 14;345:e8311