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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

「赤鼻のトナカイ」の科学的真実! サンタのソリをひくトナカイは「メス」なんです

クリスマスにツノが生えているのはメス

そしてトナカイの最大の特徴といえば、シカ科で唯一、オスメス共にツノがあること。

オスは繁殖期である春先にツノをメスをめぐる戦いに使います。
一方で、メスは子供のエサを確保すべく冬に生えるツノで、雪を掘りエサを得るのです。
ちなみに漫画『ONE PIECE』のトニートニー・チョッパーは「角強化」(ホーンポイント)で土中を掘り進んでいましたが、実際のトナカイはあそこまできません(そして、彼はオス……)。

また、食料が減る冬にツノが落ちたとはいえ大柄なオスとエサ等をめぐっていさかいになったときにもメスのツノが役に立っている可能性があります。
雪は、前脚の先がワイドで大きなひづめでも掘れますし、そもそもツノなしの冬のオスはそうしています。

こういった理由から、ツノの生え変わるシーズンは、オスとメスでは異なるわけです。
オスは秋、メスは春にツノが落ち、抜け落ちる年を重ねるごとに大きくなっていきます。

つまり、クリスマスの時期に立派なツノが生えているのは、大人のメスのトナカイなのです。

なお、ツノはオスの方が大きくなりますが、大きさや形にはオス同士メス同士でも個体差があります。

トナカイの鼻は赤くない

ここで突然ですがみなさん、「トナカイ」って何語だと思いますか?

実はアイヌ語なんです
北海道にはトナカイいないやん!? と思った方。
その通りなのですが、アイヌ民族は北海道のみならずトナカイの分布する樺太などでも暮らしていて、さらに大陸の他民族とも交流があったためアイヌ語として「トナカイ」が生まれたのです。

アイヌ関連の研究員に伺ったところ、その大陸の少数民族であるニヴフの言語がおおもとになっているようです。
そして、アイヌ語樺太方言の“tunahkay”(読みはトゥナㇵカイ)※→アイヌ語北海道方言(樺太でも一部方言で)の“tunakay”(トゥナカイ)→日本語のトナカイとなったそうです。
※「ハ」は小さい「ハ」

英語ではReindeer(レインディア)、特に北米に生息するものはCaribou(カリブー)と呼びます。
ちなみに、定番クリスマスソング「赤鼻のトナカイ」は、原題を「Rudolph the Red-Nosed Reindeer」と言います。Rudolph(ルドルフ)は個体名ですね。

イラスト等ではこの歌の影響か、「赤鼻」のトナカイが描かれることが多いですが、実物のトナカイの鼻は黒や茶色です

「赤鼻のトナカイ」の元になった物語『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』原作者のロバート・L・メイ(1905~1976年)は、ルドルフの鼻が赤く光る理由について新聞取材に対して「フォグランプ(霧灯)だ」という主旨の回答をしています。
実は霧の中をもっとも透過するのは赤色の光。
様々な理由から法規制で車に赤いフォグランプはつけられないのですが、サンタさんは赤いフォグランプ鼻のトナカイに乗っているというわけです。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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