2020.12.20
「赤鼻のトナカイ」の科学的真実! サンタのソリをひくトナカイは「メス」なんです
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。
前回は、外来生物の問題について解説しました。
今回は、クリスマスにおなじみの動物・トナカイの生態を紹介します。
動物園の「客寄せ」クリスマスイベント
今年もクリスマスの時期がやってきました。
私自身は、クリスマスのような行事にあまり熱心ではない家庭で育ったため、正直なところ特に思い入れはないのですが、世間では何かとクリスマスに関連した催しが行われ、賑やかになりますね。
私が勤務していた上野動物園でも、この時期には動物たちにクリスマスプレゼントと称して、特別なエサを与えるイベントを行っていました。
私は両生類爬虫類館の担当でしたので、ガラパゴスゾウガメにクリスマスツリーのようにエサを盛りつけるといったプレゼントをあげるイベントを手伝ったことがあります。
動物たちがクリスマスを理解しているわけはなく、もちろんキリスト生誕を祝ってもいるわけでも(それはキリスト教徒ではないヒトの多くもそうでしょうか)、恋人同士の愛の語らいをしているわけでもありません。
クリスマスに限らず、動物園においてこの手のイベントをする理由は「客寄せ」です。
それは悪いことではありません。
動物園は博物館の一種であり、来てもらうことがまず大切。そのきっかけにキャッチーなイベントは重要です。
そして、同じくらい「何を持って帰ってもらうのか?」も大切です。
私個人は、「野生動物の現状について知ってもらい、我々人間はどう振る舞うべきなのか?」という問いを持って帰ってもらえたらまずは成功ではないかと思っています。
さて、クリスマスといえば、トナカイがおなじみです。
プレゼントを配るサンタのソリを引く、あの動物です。
先述の通り、私はクリスマスというカルチャーにあまり明るくないため、「なぜクリスマスにトナカイなのか」「なぜサンタとトナカイは空を飛んでいるのか」という問いについては、文化背景に詳しい方の解説を参考にしていただけましたら幸いです。
今回は、どうぶつ科学コミュニケーターとして、実物のトナカイの生態を科学的な視点から紹介していきたいと思います。
トナカイは、哺乳綱鯨偶蹄目シカ科、トナカイ属の1種です。
トナカイには複数の亜種が存在しますが、トナカイ属には種としてはトナカイしかいません。
体長は1.2~2.2m、肩までの高さは0.9~1.4m。
北極圏周辺に生息し、植物を主食とします。
ただし、ときおりではありますが、ネズミ類や昆虫類、飼育下では魚なども食べる雑食性です。
基本的に群れで生活し、真冬になる前に少しでも多くの食料を求めてツンドラ地帯内を移動します。
10万頭もの大群で500kmも移動する場合があるのですが、大群なので群れの長さがなんと300kmにもなることが!