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「赤鼻のトナカイ」の科学的真実! サンタのソリをひくトナカイは「メス」なんです

世界初の「どうぶつ科学コミュニケーター」として、講演活動やフィールドワーク、執筆活動など幅広く活動中の大渕希郷さん(通称・ぶっちー)。
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?  
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。

前回は、外来生物の問題について解説しました。
今回は、クリスマスにおなじみの動物・トナカイの生態を紹介します。

動物園の「客寄せ」クリスマスイベント

今年もクリスマスの時期がやってきました。

私自身は、クリスマスのような行事にあまり熱心ではない家庭で育ったため、正直なところ特に思い入れはないのですが、世間では何かとクリスマスに関連した催しが行われ、賑やかになりますね。

私が勤務していた上野動物園でも、この時期には動物たちにクリスマスプレゼントと称して、特別なエサを与えるイベントを行っていました。
私は両生類爬虫類館の担当でしたので、ガラパゴスゾウガメにクリスマスツリーのようにエサを盛りつけるといったプレゼントをあげるイベントを手伝ったことがあります。
動物たちがクリスマスを理解しているわけはなく、もちろんキリスト生誕を祝ってもいるわけでも(それはキリスト教徒ではないヒトの多くもそうでしょうか)、恋人同士の愛の語らいをしているわけでもありません。

クリスマスに限らず、動物園においてこの手のイベントをする理由は「客寄せ」です
それは悪いことではありません。
動物園は博物館の一種であり、来てもらうことがまず大切。そのきっかけにキャッチーなイベントは重要です。
そして、同じくらい「何を持って帰ってもらうのか?」も大切です。
私個人は、「野生動物の現状について知ってもらい、我々人間はどう振る舞うべきなのか?」という問いを持って帰ってもらえたらまずは成功ではないかと思っています。

トナカイは大型のシカ科動物。ツノの前に突き出している部分は雪を掘ったりするのに役立つ。(イラスト/大渕希郷)
トナカイは大型のシカ科動物。ツノの前に突き出している部分は雪を掘ったりするのに役立つ。(イラスト/大渕希郷)

さて、クリスマスといえば、トナカイがおなじみです。
プレゼントを配るサンタのソリを引く、あの動物です。

先述の通り、私はクリスマスというカルチャーにあまり明るくないため、「なぜクリスマスにトナカイなのか」「なぜサンタとトナカイは空を飛んでいるのか」という問いについては、文化背景に詳しい方の解説を参考にしていただけましたら幸いです。
今回は、どうぶつ科学コミュニケーターとして、実物のトナカイの生態を科学的な視点から紹介していきたいと思います。

トナカイは、哺乳綱鯨偶蹄目くじらぐうていもくシカ科、トナカイ属の1種です。
トナカイには複数の亜種が存在しますが、トナカイ属には種としてはトナカイしかいません。

体長は1.2~2.2m、肩までの高さは0.9~1.4m。
北極圏周辺に生息し、植物を主食とします
ただし、ときおりではありますが、ネズミ類や昆虫類、飼育下では魚なども食べる雑食性です。

基本的に群れで生活し、真冬になる前に少しでも多くの食料を求めてツンドラ地帯内を移動します。
10万頭もの大群で500kmも移動する場合があるのですが、大群なので群れの長さがなんと300kmにもなることが!

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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