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ザリガニが飼育禁止に!? 人も在来種も、外来種さえも不幸にする「外来生物問題」を考える

人間の生活にも影響を及ぼす外来生物のリスク

特定であろうが、緊急対策であろうが、外来生物であることには変わりありません。外来生物には下記のようなリスクがあります。

1.もともと生息していた動植物(在来種)を食べてしまう。
例:ウシガエルなど

2.食べ物や棲処すみかが似ている在来種のライバルとなって、それらを奪ってしまう。
例:セイタカアワダチソウによる在来のススキやヨシ等との競合など

3.系統的に近い場合、在来種と外来種で雑種をつくってしまう。
雑種の子孫が生まれるということは、それだけ在来種の子孫が減ることを意味します。
例:チュウゴクオオサンショウウオによるオオサンショウウオとの雑種形成など

4.それまでその地域には存在しなかった病気や寄生生物を持ち込んでしまう。
在来種にとっては新しい病気なので免疫や防御法がないので、大きな問題になりかねません。
例:アメリカザリガニによるザリガニカビ病など

こうした要因が複合的に絡んで、在来種を絶滅の危機に追いやることも少なくありません。

とある池から駆除されたアメリカザリガニたち。処理に困って筆者に相談があった。(撮影/大渕希郷)
とある池から駆除されたアメリカザリガニたち。処理に困って筆者に相談があった。(撮影/大渕希郷)

例えば、アメリカ原産のミシシッピアカミミガメ(通称ミドリガメ)はペット用に大量輸入されたうちの一部が野生化して、今や日本中に広がっています
とにかく食欲旺盛で、日本の淡水域にもともと生息していたエビ、カニ、貝、水生昆虫、水生植物などなど何でも食べて生態系を破壊してしまいます。

その結果、日本の淡水域に棲んでいたニホンイシガメが追いやられ、今や日本各地からその姿を消して、準絶滅危惧種に。
その一方で、アメリカではミシシッピアカミミガメがペット用に乱獲されたために生息数が減少して問題となっています。
つまり、日本では数が増えて問題視され、原産国では数が減って問題視されているのです。

こうした問題は、めぐりめぐって、人間の生活にも様々な影響を及ぼします。
実際に、徳島県鳴門市ではミシシッピアカミミガメによるレンコンの食害被害額が年間1500万円にものぼっているそうです。

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新刊紹介

大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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