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鈴木涼美「×××な男~酒と泪とオトコと美学」
○○○な女〜オンナはそれを我慢している」のアンサーソングともいうべき新連載は、気鋭の文筆家・鈴木涼美によるオンナ目線の男性論。とはいえ、ここで取り上げるのは現代を生きる「今」のオトコたちの生態事情。かつてはもてはやされた男性像が、かつては相手にもされなかった男性キャラが、令和の今、どんな進化・退化・変遷を遂げているのか? 冴え渡る涼美節・男性論に乞うご期待!

イケメン発言男~自分の低い鼻を完全に忘れてる話

幕府が滅びても精神的鎖国を続けていたお江戸の町も、さすがにそうも言っていられないのか英語メニューなど用意している店はここ五年で急速に増えた。
難解な三種類の文字を使う言語の国として当然のオモテナシだと思うけど、何故か難解な三種類の文字を毎日巧みに駆使して仕事してる私も、3回に1回くらい「イングリッシュメニュー?」と親切な店員さんに聞いてもらうことがあるので「ありがとうございます、でも日本語のメニュー読めます。ちなみに何人なにじんぽいですか?」と丁寧に聞き返すことにしている。

だけど六本木とか日本橋に結構な確率でいるのは……

普通は中華系に間違われるけど、日サロで鍛えたメラニンが今も夏になると頼んでもないのにやる気を出す世代だからか、結構な確率でベトナムとかタイからの旅行客だと勘違いされることも多い。
顔が外国っぽいというより、単にファッションが今の東京の流行から見て場違いだとか、態度が挙動不審で地元感がないとか、日本人だけど頭悪そうで漢字じゃかわいそうとか、そっちが理由なのかもしれないけど、とにかくどんなに欧州ブランドを着ていようがアメリカンコーヒーを飲んでいようが、西洋人に間違われることはないし、私はその平たい顔族の運命を受け入れて、精一杯アジアンな人生を全うしようと思っている。

なんというか、米国籍だったり米生まれだったりする日系・中華系の友人というのは、幼い頃からの食習慣や椅子生活のせいなのか、やっぱりちょっと西洋顔になっていて、いまだに炬燵とか銭湯とかがないと冬が越せない極東の島国育ちの私とはだいぶ醸し出す雰囲気が違っていいなと思うのだけど、それとは別に、なんか知らないけどアメリカンな雰囲気を醸し出し、高いスーツのポケットに片手を突っ込んで、スタバの小さめのカップでコーヒーすすりながら、カタカナ語を多用する、外資系でございという態度の男がこの世にはいる。
六本木とか日本橋には、結構な確率でいる。
 

平たい顔の宿命は粛々と受け入れて生きるしかない
平たい顔の宿命は粛々と受け入れて生きるしかない

大学四年生の時、就活というとついでに合コンを頼まれて、お調子者にはセックスまで頼まれて、仕事と男を両方同じ会社でゲットする、というのが退屈な世の中をなるべく楽しみながら生きる女の王道パターンだったのだけど、リーマンショックとかサブプライムローンとかいう単語が紙面をにぎやかすちょっと前にその時期を迎えた私たちの間で、人気を博していたのは米国系のインベストメント・バンカーだった。すでに院試を終えて、少なくともあと2年はホステスとAV女優でもしながら気楽に学生生活をエンジョイしようとしていた私は、他人のインターンやOB訪問に便乗して、そういった飲み会にたまに登場していた。
 

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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