2019.8.19
代理店系メンタリティ男〜独特のカタカナが名刺を彩ってる話
結婚を鳥かごにたとえたモンテーニュは、「外にいる鳥は必死に中に入ろうとし、中にいる鳥は必死で逃げ出そうとする」とした。
代理店の男は鳥かごの蓋の開け閉めができるマジックハンドな鳥のようだ。
自分の凡庸さの需要に四苦八苦したタイプの凡人である私は、自らの凡庸さと真摯に向き合い、丁寧な窓口業務をこなす郵便局員とか、あるいは凡人の幸福とハナから無縁な天才ピアニストとかに惹かれがちなので、私よりずっと賢く美しい形で両極への欲望のバランスをとる彼らを見ると、スーツの背中にセミの幼虫とか入れたくなるのだけど、この辺りまでは私のフェティシズムと黒歴史の話なので結構どうでもいい。
被害があるのは、そういうメンタリティは当然、仕事以外の多くの分野でも発揮されるからで、
上司や親に紹介しやすい女と結婚を前提に付き合うべきだが目の前のグラドルのおっぱいも揉みたい、という二股の道の真ん中で両方をちょっとずつ不幸にしながら離れていかない程度にはちょっかいを出し続けるし(=浮気)、
品がよく家を守るのに優れた妻と盤石で文句のつけようのない家庭も作りたいが、はっちゃけた女子大生も抱きたい、という二択をしかと離さず両方やるし(=不倫)、
かわいい男の子と女の子を作っていっちょまえにパパなんて呼ばれたいが、妊婦じゃない女が持ち帰れる飲み会に行くのは諦めたくないという欲望のまま出産帰省中の妻のいないマンションに変なギャルを連れ込む(=最低)。
自分が持ち切れる範囲まで軽量化できる彼ら
あれもしたいこれもしたいと歌った甲本ヒロトは、あれもこれもと言いながら、一般的な日本の社会人の持つ多くのものを持たない人生を選び、その分、凡人が到達し得ない場所の景色を見たと思うのだけど、もっと愚直に歌詞のまんまの彼らは、色んな女を抱くと同時に、彼女とか呼ぶ女にもわりと色々詰め込む。
そうやって、女性の素敵を応援する会社を起業してる元モデルとか、日舞師範の資格も持つ航空会社社員とか、料理ブロガーとしても活躍する外資OLとか、純文学を書く才能があると言われたことのある美容ライターなど、まさにお砂糖にスパイスをちょっと混ぜた、みたいな、クミン入りヨーグルト、みたいな女をどこからか探してきて、仲間内の飲み会に連れてくる。
その組み合わせがとても絶妙で、間違っても売春してる東電OLやAV日経記者など、混ぜたら異臭のする納豆カレーみたいなものは手に取らない。
人妻になった元カノにラブレターを送りながら自分は若くして独身で死んだ哲学者に同調したくなどないが、Aを選んでも後悔する、Bを選んでも後悔するというのが、人生の苦痛であり味わい深さだと思うのだけど、AもBも、自分で持ちきれる範囲まで軽量化して持ち続ける彼らは、現在のところ勝ち組のまま老後を迎えるケースが多いので、やっぱりスーツにセミが入ってるくらいで、ちょうどいいんじゃないかしら。